約 3,225,819 件
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/3178.html
ホテル・アグスタ襲撃事件、後にそう呼ばれる事となる今回の事件は、一夜にしてミッドチルダ全土を震撼させた。 事の発端はオークション会場でもあるこのホテルにガジェットが襲撃、更にその後に現れた魔導師の手によってアグスタは崩壊、 警備に当たっていた管理局員のうち、六課前線メンバーは奇跡的にアグスタの瓦礫の中から救出されたのだが、 本局の局員は被害を被り、死傷者・行方不明者合わせて数十名という未曾有の大惨事となった。 そして今回の警備責任者で六課の部隊長でもある八神はやては、数日後に開かれる六課の是非を問う審議会を控えていた。 リリカルプロファイル 第十七話 手札 事件から数日後、此処六課の訓練所にはヴィータとなのは、そしてティアナの姿があった。 だがその中にスバルの姿は無く、なのははスバルの事をティアナに問いかける。 「ティアナ、今日もスバルは……」 「……はい」 襲撃事件から三日後、目を覚ましたスバルは部屋に引きこもり、食事も睡眠すら取らずにいた。 そんなスバルの様子を心配したティアナはスバルに優しく話しかけるが、 スバルは暫く一人にして欲しいと一言呟くと、じっと一点を見据え指にはカシェルから貰った指輪がはめられていた。 ティアナは、…今スバルには一人の時間が必要なのだろう…と考え、スバルの言葉に応じ部屋を出て別の部屋で寝泊まりする事となった。 しかし訓練所や何処かへ行く際には必ず、スバルに声を掛け毎日食事を届けているのだが、未だスバルの傷は癒えぬまま現在に至っているのである。 そして今日も訓練所に来ないスバルに対し、ティアナは落ち込む表情を見せながら俯き口を開く。 「スバルはもう……駄目かもしれません………」 「ティアナ……」 ティアナは思わず悲観的な言葉を口にする。 …スバルはきっとカシェルの死を受け入れる事が出来ないでいる、そして今ある現実から逃げている… スバルの様子を改めて思い返し、そう考えるティアナ。 するとなのはは、瞳を閉じゆっくりと息を吐く、そして瞳を開くとティアナに語りかけるように言葉を口にする。 「ダメだよ…ティアナがそんな事言っちゃ」 その言葉にティアナは顔を上げると、なのはの瞳は怒りとも哀しみとも取れる色を宿していた。 そしてなのははティアナの肩に手を当て話を続ける。 「ティアナはスバルの友達なんだよ?」 「なのはさん……」 「それに…スバルの傷を癒せるのはティアナだけなんだから」 なのはのその言葉は、ティアナの過去を知っているからこその発言であった。 “大切な者を失う痛み”それを知っているティアナだからこそ、スバルの力になれるハズだとなのはは語る。 その言葉にティアナは俯き目を閉じる、…今まで自分はスバルが現実から逃げていると思っていた。 だがそれは違っていた、自分もまたスバルから逃げていたのだ…と。 ティアナは何かを決意したかのように頷き顔を上げる、するとその表情には迷いが無く決意に満ちていた表情を表していた。 「なのはさん!私スバルの所に行ってきます!」 「うん分かった、いってらっしゃいティアナ」 なのはの了承を得たティアナは、早速スバルがいる部屋へと向かい、その後ろ姿を見届けるなのは達。 辺りが沈黙に包まれる中、今まで黙っていたヴィータの口が開く。 「んで、どうすんだよ今日の訓練は」 「そうだね……今日は一日中ヴィータちゃんと模擬戦…かな」 「ゲッ!マジかよ!」 そう言ってヴィータの顔を見るなのは、その顔は笑みを浮かべていたが、 その目はまるで獲物を見つけ狙いを定めたかの様に細く鋭く光っており、ヴィータは思わず青ざめる。 あの敗戦後、なのは達は知らず知らずの内に己の力を過信していたと考え、それぞれ鍛錬を始めていた。 幸い此処六課には鍛錬に相応しい人物が集まっている。 そしてスターズはスバルがいない分、午前中は二人でティアナが動けなくなるまで鍛え上げ、 午後はヴィータとなのはが模擬戦を行う形を取っていた。 しかし今回はティアナがスバルの元へ向かった為、朝からなのはと一日中模擬戦へと変わったのである。 ヴィータは明日は筋肉痛は確実だなと考えつつグラーフアイゼンを起動させ構えるのであった。 一方ティアナはスバルがいる部屋の扉の前にいた。 ティアナは深く深呼吸をすると、覚悟を決めスバルが居る部屋へと入る。 部屋の中は暗くカーテンも閉め切っており、部屋の中心にはスバルが座り込んでいた。 スバルの目は虚ろで隈が出来ており一睡もしていない様子で、後ろには朝ティアナが持ってきた弁当が手つかずに置いてあった。 スバルは通常勤務なら四・五日寝なくても平気なのだが、今のスバルは 苦悩や悲観や憎悪、そしてカシェルへの想いが頭を駆け巡り、精神的に疲弊している状態なのである。 そんな目を背けたくなる様子のスバルだが、ティアナは真横へと近づき両膝を付く形で隣に座る。 そして辺りは沈黙に支配され、一分すら悠久の時の長さにすら感じる部屋の中でスバルの口がゆっくりと開き始めた。 「……ティア」 「…うん」 「私ね…カシェルの事、好き……だったんだと思う…」 そう言うとスバルはカシェルとの思い出を話し出す。 最初はただの男友達だった…しかしカシェルは優しく、色々と手を貸してくれた。 一緒に訓練や学習をしたり、自主練に付き合ってくれたり、宿題に付き合ったり…それに食事を奢ってくれた事もしばしばあった。 そしてそれらが積み重なっていくうちに、自分に兄が出来たような感覚を覚えたと。 自分には二つ上の姉がいる、それ故にカシェルに姉の面影を重ねていたのかも知れない…その事をカシェルに話してみると、 微笑みを浮かべ、スバルの頭を撫でながらカシェルもまた自分の事を妹のように思っていると答えたと。 そう嬉しそうな雰囲気で思い返しているスバルにティアナは問いかけた。 「今でもカシェルを兄として?」 「……………分かんない」 今スバルの胸の内に広がるカシェルへの想いは兄としてなのか、男としてなのか…今はもう判断出来ない。 だがどちらにせよ、カシェルといた時間は、何よりも充実していたとスバルは微笑みを浮かべながら語るが、すぐに笑みが消え暗い表情に変わる。 カシェルの励ましもあり六課に編入したスバルは強くなる為に努力し、またいつかカシェルと会える事を楽しみにしていた、だがその願いは無惨にも打ち砕かれた。 カシェルは見るも無惨な姿となってスバルの前に敵として現れた。 その時自分はカシェルに対し何も出来なかった、カシェルを救い出すことも、カシェルを苦しみから解放させる事も… そして今、カシェルの為に何が出来るのか自分は悩み続けていると囁くように語った。 「ねぇ…ティア……」 「うん?……」 「私…カシェルに何をしてあげればいいんだろう」 スバルの言葉にティアナは瞳を閉じ考え込む、そして五年前の自分を思い出していた。 …あの時、兄を無くした自分は涙が枯れるまで泣いた。 犯人を恨み復讐を誓おうともしたが、犯人は自首し更に自殺した為それすら適わなかった。 そして兄の為に自分が出来る事…それは兄の夢を引き継ぐ事、その決意は“大切な者を失った痛み”を和らげ今に至っている。 そしてスバルは五年前の自分と同じ状況にいる、しかしスバルと自分では大きな違いが一つ在る。 それは敵討ちの相手がいる事だ、だが心優しいカシェルが復讐など望んでいるハズがない。 ならばスバルがカシェルに出来る事は一つしかない、そう考えるとスバルの肩に手を当て優しく答えた。 「……それは勿論、カシェルの為に泣いてあげる事よ」 スバルが泣いて悲しんであげる事でカシェルが生きていた“証”になるとティアナは語る。 その言葉にスバルはティアナの顔を見上げる、ティアナは優しい笑みでスバルを見つめていた。 スバルはティアナのその表情にカシェルの陰を見ると、今まで胸の内に溜めていた様々な感情が込み上げていく。 そしてティアナの肩を掴み顔を胸に埋めると、込み上げた感情が声となり涙となってティアナの胸の中で解き放たれた。 「っ!…カ…シェル……うっ…うぁぁああああああああ!!!」 スバルは泣いた…泣き叫んた…声が枯れる程に…涙が枯れる程に… そして…その感情を優しく包み込むようにスバルを抱き締めるティアナ。 「強くなろう…スバル……」 ティアナの言葉に頷きつつ涙を流し続けるスバル、それを全身で受け止めるティアナであった。 それから数日後、八神はやて率いる六課の是非を問う審議会が此処本局にある審議室にて行われる事となった。 部屋は広く、はやてを中心に左の席にはクロノ提督、レジアス中将、カリム少将と並び、右側の席には伝説の三提督の姿があった。 そして審議席にあたる後方の位置には複数のモニターが設置されており、管理局の一佐から三佐までの顔を表示されていた。 だがその中にはやてが師匠と呼ぶゲンヤの姿は見受けられなかった。 そしてはやての正面には巨大なモニターが設置されており、更に上には左から順に青・赤・黄色の最高評議会のエンブレムが映し出されたモニターが設置されていた。 そして巨大モニターの隣には竜を模した杖を携える老将の姿があった。 ガノッサ提督、かつて伝説の三提督と共に一時代を築き、生涯現役を今も貫き通す、自称神を屠る者と呼ばれる人物である。 今回はガノッサが審議の中心となって指揮を取るようである。 …そして開始時間になり審議会が開幕された。 「これより六課の是非を問う審議を執り行う」 まず今回のアグスタ襲撃によって被った被害は本局の局員数十名、ホテル・アグスタの崩壊、そして歴史的価値のあるロストロギアの破損・消失などが上げられた。 そして今回はやては六課…いや管理局の切り札とも言える能力リミッターを解除を承認した。 しかし結果は上記の通り、その被害結果により、はやての指揮官能力へと審議は移る。 するとモニターの審議者達が今回の結果に対して次々に述べ始めていた。 「…所詮二佐とはいえ小娘、部隊長としての技量など知れたものだったのでは?」 「いくらレアスキルを持っていてもな…些か特別扱いし過ぎたのではないだろうか」 「そうかもしれんな…それに彼女は闇の書事件の当事者であるしな」 するとクロノはモニターの審議者の最後の言葉に対し、手を挙げ異議を唱える。 「待ってくれ!今回の審議の内容ははやての指揮官能力の是非についてだ!闇の書の事件は関係ないハズだぞ!!」 クロノの言葉に一同はざわめくと、ガノッサは静粛を促し更に話を続ける。 今回において能力リミッター解除は結果的に有力ではなかった。 つまり貴重な切り札を無駄に切ったと言うところにある。 それは指揮官としてどうなのかはやてに問いかけると、はやてはこう答えた。 「確かにあの場で切り札を切るんはどうかと思いました、せやけどあの時あの犯人、 レザードをこのままにしとくんはミッド…ひいては次元世界全てに被害が被ると思うたからです」 はやての力強い発言に頷くクロノとカリムに対し、ガノッサはエンブレムが映し出されているモニター、最高評議会に問いかけると赤いモニターが反応する。 「如何しましょう?最高評議会の皆様……」 「……古代遺物管理部第六課の解散を要求する」 「何故ですか!」 最高評議会の決定に今度はカリムが申し立てる。 六課は設立して数ヶ月のうちにロストロギアであるレリックの回収や、リニア事件から姿を現した不死者の解析など、様々な功績を立てたと。 今回の失態一つで今すぐ解散を促すのは如何なものかとカリムは主張する。 するとカリムの主張に黄のモニターが応え始める。 「確かに古代遺物管理部第六課は設立されて日が浅いうちに様々な功績を立てた。 だが…今回の失態はそれらの功績を積み上げても手に余るのだよ」 故にこの様な判断を下したと語り、その判断に不服はないかとガノッサは問いかけると、はやては口を開く。 「…確かに今回の失態は大きいと思います、せやけど六課のみんなは頑張って仕事をしております! それにこれからの事を考えれば六課の存在は必要なるん思います! せやからお願いです!今回の失態、私の首一つで片付けてもらえませんか?」 「……状況を飲み込めて居ない様だな八神二佐、事態は貴様の首一つで収まる状態では無いのだ」 はやての申し出に対し今度は青いモニターが話し始める。 今回の六課の失態で、民衆は魔法に対し大きな不信感を抱きつつある。 管理局は魔法に対し質量兵器とは異なり比較的クリーンで安全な手段だと謳っていた。 しかし今回の事件によって魔法による破壊工作及び殺人行為が可能だという事が、露呈し広まってしまったと。 その情報は管理局の意向に反した情報、しかも一夜にして全土に知れ渡ってしまった。 その発端を作ったのが六課であり、あの男レザードの所業であると。 レザードはアグスタを魔法によって崩壊させ、更に失踪事件を引き起こし失踪者を用いて不死者を製造した人物でもある。 そんな人物がミッドチルダに潜伏している、次は何処を狙われるか…誰が狙われるか…民衆は不安で仕方がない。 そしてそれらを払拭する為にも、今回の事件を招いた六課の解散は否めないと語る。 「元々古代遺物管理部第六課は実験的に設立した部隊、そして…このような失態を生んだ部隊に最早存在価値など無い」 最高評議会は吐き捨てるように事実を叩きつけると、はやては何も言えず萎縮する。 そんなはやての姿を後目に、ガノッサは最高評議会の意向を受け六課解散を宣言した。 次にはやてに対するの処分の審議を始めようとすると、レジアス中将が割り込むように挙手する。 「何かな?レジアス中将…」 「八神二佐の処分、それは儂に任せて貰えんか」 思わぬ人物の提案にガノッサは顎に手を当て考え込む。 …あのレジアスが自ら動くとは、だがあの男ならば甘えなど無く処分を言い渡すだろう… それに今のはやては本局にとっては“害”に過ぎない、それ故に地上本部が引き取ってくれるのであれば願ってもない事かも知れない。 その旨を最高評議会に話してみると満場一致で了承し、八神はやての処分はレジアス中将に一任する事となり審議会は閉幕した。 「では八神二佐、ついて来たまえ」 レジアスはそう言うと席を立ち、はやてはレジアスの言われるがまま、ついて行く事となった。 それを苦虫を噛み締めるような表情で見つめるクロノ達であった。 …審議会を終えたクロノは自分の船、クラウディアへと戻りブリッジへ続く通路を歩いていた。 そしてブリッジへと辿り着くと、金髪の青年がクロノを出迎える。 彼の名はロウファ、本局の一等空尉でクロノの補佐を務めている。 クロノは席に座ると深くため息を吐く、その様子にロウファは質問を投げかけた。 「お疲れさまです艦長、審議会はどうでしたか?」 「…どうもこうもないな、あれではただの吊し上げだ」 今回の審議の結果に頬に手を当てふてくされた様子で話すクロノ。 今回の審議会はまるで六課の失態を期に解散させようとする雰囲気に満ちていた。 そして結果的に六課は解散を余儀なくされ、はやては本局から追い出される形で地上本部に出向になったと。 一通り説明を終えたクロノであったが、未だその顔は不機嫌なままであった。 其処へお茶を持った那々美一等陸士が姿を現す。 「艦長、お茶を用意いたしました」 「あぁ、すまない那々美」 クロノは手を伸ばしお盆からお茶を持つとゆっくりと啜る。 するとクロノの口の中に甘ったるく濃厚なミルクの味が広がり、思わず喉を詰まらせる。 何故ならその味はかつて母が飲んでいたお茶の味をしていたからだ。 その味にクロノは那々美に問いかける。 「なっ那々美、このお茶は一体?!」 「この前送られて来たんです、緑茶ラテと言うそうです」 送られてきた緑茶ラテの量はダンボール一箱分、送り主はリンディ・ハラオウン、クロノの実の母親である。 そして同封された手紙にはこう記されていた、【疲れた時には甘い物をとって疲れを癒してね】と。 クロノは思わず頭を押さえる、何故ならばクロノは甘い物は苦手であるからだ。 更に量はダンボール一箱分、確かに疲れている時には甘い物は有効だ。 だがそれにしたって量が半端ではない、寧ろ糖尿病に掛かってしまうレベルだ。 クラウディアにはクラウディアで新たな問題が発生したとクロノは頭を抱え左右に振ると、オペレーターである夢瑠一等陸士が暗号通信を受信したとクロノに伝える。 「誰からの通信だ?」 「え~っと、ガノッサ提督からみたい……です!」 クロノの指示のもと夢瑠は暗号を解析、通達された内容は指定された場所と日時に信頼できる部下を一人引き連れて来るようにという事であった。 その内容にクロノは腕を組み考え込む、あのガノッサ提督からの通達ではそうそう無碍には出来ない。 クロノは半ば諦めに近い形で内容を受託、早速クラウディアは指定された場所へと進路を取り始める。 その中、ロウファはクロノに問いかけた。 「それで現場には誰と?」 「そうだな…ジェイクと、だな」 「成る程、あの人なら安心ですね」 クロノの放った名に納得するロウファ、ジェイクリーナス一等陸尉、数々の実績と経験を兼ね備え、教官資格も取得している人物である。 そしてクロノ率いるクラウディアチームは一路ガノッサが指示したポイントへ向かうのであった。 場所は変わり此処はゆりかご内のレザードの施設、中ではレザードが入手した操呪兵設計図面を基にゴーレムを作成していた。 その中何かに気が付いたレザードが声をかける。 「覗き見とは感心しませんね、セイン……」 そう言うと床からセインが飛び出すように出て来た。 レザードはセインを横目に頭を横に振る、どうやら訓練から逃げ出してきた様子だ。 「またサボったのですか?仕方がない人ですね」 「だって私偵察型だよ?戦闘型と一緒に訓練したらコッチが持たないよ」 「やれやれ…そう言えば、黄金の鶏はどうしています?」 「コッコの事?今日はウェンディが面倒を見ているよ」 コッコとは黄金の鶏のあだ名らしく、コッコの面倒はナンバーズが一日交代で面倒見ていると。 そう言うとセインはレザードが作成しているモノに目を向ける その姿は頭部が小さくモノアイで、上半身は巨大で腕は太く、下半身には足の代わりに浮遊体のような球体が二つ付いた姿をしていた。 「…博士、これは一体何です?」 「これですか?ゴーレムですよ」 「あぁ、例の設計図の」 セインの言葉に頷くレザード、しかし設計図通りに造るのは面白くないと考えガジェットの技術やアレンジを加えていると話す。 ゴーレムの動力源は人造魔導師の技術を応用しリンカーコアを起用、 表面の装甲は軽くて強固なミスリル銀、内部材質は弾力と耐久力を持つダマスクス、そして頭部・腕の外装甲は特別にレザードのデバイスと同様オリハルコンで造られていると。 そしてリンカーコアを搭載させている事で、ある程度の魔法を使用する事が出来る。 そして今の完成度は80%と自慢げに語った。 「へぇ~、それでコレって名前あるの?」 セインの言葉に考え込むレザード、確かに名前が無けれは色々と不便である。 そしてどんな名前にするか考えていると、かつて自分が造ったホムンクルスの名を思い出し、思わず苦笑する。 「どうしたの?博士」 「いえ何でもありませんよ………名前ですが、ベリオンと言います」 「ベリオンかぁ」 そう言ってベリオンを見つめるセイン、すると入り口からウェンディの呼ぶ声が響く。 「あぁ!!こんなとこに居たんッスかセイン姉!トーレ姉がカンカンッスよ!」 ウェンディに窘められたセインはレザードに別れの挨拶を交わし足早に去っていく。 レザードはまるで台風にでも遭ったかのような印象を受けていた。 一方、審議会を終えた二人はハイヤーで地上本部へと向かっていた。 車内はレジアスとはやてが乗っており、カーテンは締め切られて、外の様子が全くわからない造りをしていた。 暫く車内は沈黙に包まれているとレジアスがはやてに問い掛ける。 「八神二佐、突然ではあるが、君はホワイトナイトという株用語を知っているかね?」 突然の質問に困惑するはやてだが、レジアスの質問に答える。 ホワイトナイトとは株用語の一つで、買収される企業にとって友好的な第三者の事を指すと。 はやては話し終えると今度はクラウンジュエルの事を聞いてくる。 クラウンジュエルとは、買収する企業において資産価値、収益力、事業力などが最も魅力的な部門を指すと答えた。 はやては一通り説明を終えるが、疑問を感じていた。 何故株用語を聞いてきたのか、まさか自分に株でもやれとでも言うのだろうか? そう考えているとハイヤーが止まり扉が開く、はやてはハイヤーから降りると此処はかつての機動隊の隊舎で、入り口にはゲンヤが出迎えていた。 はやては困惑していると、レジアスとゲンヤが付いてくるようにはやてに指示、三人は隊舎の中へと赴いた。 隊舎の中は綺麗に掃除されており、とても八年前の建物とは思えない作りをしていた。 三人は通路を道なりに歩いていると、ドアへと辿り着く。 そしてドアを開くとその光景にはやては唖然とする、ドアの先に広がる光景とは六課のロングアーチとよく似た施設が広がっていたからだ。 はやてが唖然としている中、レジアスがはやての処分を言い渡す。 その内容とは、此処機動隊の隊舎を基に新たな部隊の部隊長を任せると。 だがその任はまるで、もう一度六課を設立しろと言っている印象をはやては受けていた。 そしてはやては深々とお辞儀をし、大声で感謝の弁を述べる。 「有り難う御座います!こんな私に―――」 「八神二佐、何か勘違いしているようだな」 レジアスの言葉に頭を上げ首を傾げるはやて、レジアスの主張はこうである。 今回の事件で一番の問題点は六課の失態ではなくあのレザードという存在であると。 奴の存在によってミッドチルダの安全神話は崩壊した。 奴をこのまま野放しにすればミッドの地上は危うい、そこで今回の失態により株価が落ちたはやてに目を付けたという。 だが、はやてに現状に存在している部隊を渡すのはもったいないと考え、この様な処置を与えたと語った。 「機動隊は我が地上本部の汚点とも言える存在、つまり…本局の汚点と言える貴様に地上本部の汚点を与える、此ほどの相応しい処分は無いと思われるがな」 そう言って悪意に満ちた笑みを浮かべるレジアス、更に機動隊の隊舎を与えるという事は、最前線で戦ってもらう事の意味も含めているという。 何故ならレザードという前代未聞の犯罪者に、地上本部の局員を全面に押し出せば此方の戦力はがた落ちとなる。 それを防ぐ為の部隊でもあるとレジアスは付け加えた。 だがはやてはその言葉の裏に潜む意味を理解すると同時に、レジアスが車内で問い掛けた質問を意味を理解する。 レジアスは六課の存在を本局のクラウンジュエルとして見立てていた。 そして地上本部と言うホワイトナイトによって六課を回収する為この様な処置を行ったのであろう。 だが六課の再建は管理局…いやレジアスの株を下げ痛烈な非難を浴びる事になる。 しかしレジアスはそれを覚悟でこの様な処置に至ったと…するとはやての目に涙が浮かび上がっていた。 だがはやては涙ぐむ目を左腕で拭い敬礼を行う。 「八神はやて二等陸佐、謹んで処分をお受けいたします」 その返事を聞いたレジアスははやてに背を向けると、まずゲンヤが出て行き、レジアスがドアの前まで向かうと立ち止まり大きな声で独り言を喋り出す。 「しかし…今の時期に新たな部隊に戦力を渡してくれる者など居るだろうか? まぁ、いざとなったら最近解散した六課とやらの人材でもかき集めるがいいだろうな 何も知らぬ素人より役に立つかも知れんしな」 そう言うと後にするレジアス、その場にははやてが一人ぽつんと立っていた。 だがはやての顔は徐々に笑みを浮かべ始め、まるで子供が新しい玩具を手に入れた時のような表情を現していた。 「ヨッシャァァ!!やったるでぇぇ!!」 気合いとともに叫ぶはやて、六課はまだ終わってはいない、此処からまた六課を作り直す!…そう意気込むはやてであった。 その意気込みをドアの向こうで聞いていたレジアスとゲンヤ。 そしてゲンヤは通路を歩き出すと目だけをレジアスに向け呆れた口調で話す。 「相変わらず…大きな独り言だな」 「フンッ………」 ゲンヤの言葉に一言で答えるレジアス、そして二人は今度こそ、その場を去っていったのであった。 一方クロノはガノッサが指定したポイントに辿り着く。 そこは研究施設のようでクロノとジェイクリーナスは通路を進んでいくと突き当たりのドアに辿り着く。 其処には先に到着していたガノッサが佇んでいた。 ガノッサの隣には青髪の女性がおり、ガノッサの秘書を務めているようである。 ガノッサはクロノの姿を確認するとドアを開け中へと入る。 そしてクロノも後に続き中に入ると、部屋の中にはバリアジャケットや騎士甲冑を着込んだ男女十名が整列していた。 その姿にクロノはガノッサに問いかけてみると、ガノッサは秘書にモニターを起動させるように指示、 起動させたモニターには最高評議会のエンブレムが映し出されると、クロノの問い掛けにモニターが答えた。 ―――“人型デバイス”エインフェリアであると――― 前へ 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/touhouss/pages/86.html
「このたび東方変身抄はVSスレからクロスSSスレに移転してやる事になりました」 「みんな!新スレでも・・・」 「イクサ爆現!!」 「コレクッテモイイカナ」 「まとめて愛してやる!!」 「頂点に立つ男だ!!」 「「どうせ俺なんか・・・」」 「オンドゥルラギッタンディスカー」 「・・・よろしくお願いします!」 もはや通るものもいない道を歩く二人の男 「兄貴・・・ここどこかな」 「さあな、この状況から察するに、本当の地獄とやらについたのかもな」 「違うわよ、ここは地底の旧都、まぁ地獄って言うのもあながち間違いではないけどね」 そんな二人に声をかけたのは嫉妬を司る橋姫、水橋 パルスィ 「貴方たちはどうせ、明るい地上からきたのでしょ、妬ましいわね」 「明るい地上・・・俺らが見てきたのは果ての無い暗闇だけだよ、なあ兄貴」 「ああ・・・地上も地底も何もかわりやしない」 「何者なの、あんた達」 「地獄から来た地獄兄弟、ってとこかな」 「うそでしょ、あんなとこからここになんて来れる筈がない」 「あらあら、こんなとこに人間とは珍しいね!」 酒を飲みながら現れたのは山の四天王星熊勇儀 勇儀にため息をつき、事の顛末をはなすパルスィ 「なるほど、あんたたちは地上から来た、で素性もろくに語らないと」 うーんと考え込む星熊勇儀 「そうだ!あの地霊殿の主に頼めば手っ取り早いね、 案内してやるから駄目になるまで付いて来なよ!」 さとりー!いるんだろ!ちょっと頼みがあるんだが」 地霊殿の前で大声で中にいるものの名を呼ぶ勇儀 その声に応えて中から現れた少女 心を読む事が出来る為、如何なる妖怪、怨霊からも恐れられる存在である古明地さとり 「なるほど、そこの二人の素性を読めばよいのですね」 「流石だね、話が早くて助かる」 「いいよなぁ・・・こんな豪華な建物の中でペットに囲まれてさ」 「ふん、俺たちは光を求めてはいけない、暗闇を歩くだけだ」 うなだれ座り込む二人、そんな二人の心を読むさとり 「(人だけどただの人じゃない、ZECT?ワーム?ゼクター?訳のわからない単語が多すぎる)」 深く考え込むが、断片的な記憶からその意味を読み取ったさとり 「なるほど、ワームなる物と戦うZECTと言う組織の人でしたね貴方たち、矢車想と影山瞬 だけれど、その組織を追われた貴方たちはそうやって、やさぐれているのですね」 「聞きなれない言葉が多すぎるね、ますます妙な奴らだ」 話を聞きゆっくりと立ち上がる二人 「お前・・・気に食わないな、どういうからくりかは知らんが(やるぜ・・・相棒)」 「俺たちの嫌な思い出を呼び覚ますなんてむかつくね(ああ、兄貴)」 地底の地にあっても資格者のもとへ飛ぶゼクター 「変身・・・」「変身・・・」 「あくまで戦いますか、いいでしょう、眠りを覚ます恐怖の記憶で眠るがいい!」 「うーん、やりすぎたかしら」 「さあね、まあいいんじゃないか」 「俺のザビーゼクター返してくれよーーッ!!うぅぅぅ・・・」 「ウァァァァァァァァァァァァァァッ」 おのおののトラウマをぶつけられもはや、戦闘意欲を失った二人 「まぁ、地上にやっとけば問題はないんじゃないかしら」 「わかった、じゃ、地上までやればいいんだな、ほら!行くぞ!」 そのままズルズルと引きずられていく二人 「うぅぅ、ザビーゼクター・・・」 「どうせ俺なんか・・・」 「(ワーム・・・人間に擬態し記憶までコピーする、何者かしら、どうでもいいか)」 次回予告 地底から追い出された地獄兄弟は暇を持て余した天人 比那名居天子と出会う 「ホント暗い気質ねあんたたち、まあいいわ、人間が天人にどれだけ足掻けるか見せてもらおうじゃない」 「天人だって、いいよなぁ・・・何の苦労もなさそうで」 「地底では散々な目にあったからな、行くぜ相棒」 次回 天人くずれと地獄兄弟
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/1587.html
魔法少女リリカルなのは Strikers May Cry 番外編 「永劫に語られし魔剣士の系譜」 かつて悪魔を求めた邪悪なる司祭と狂気に溺れた科学者の生み出した禁断の技により、この世には数多の悪魔が姿を現すようになった。 悪魔は強大にして残忍極まる存在であり、多くの世界で多くの人々を喰らい殺し蹂躙する。 だが人よ、恐れる事無かれ。 人の世には強く気高き魔剣士の血族と彼らと共に戦う戦士達がいるのだから。 そして今宵もまた狩人達は魔を狩らんと月下を駆ける。 「ディバインバスター!!!」 月光の下で白く輝く手甲を付けた女性がその拳を振るい青き魔力波動を放たれる、その閃光は眼前の醜悪な魔物を容易く屠り去る。 「ぐぎゃああああ!!」 赤い満月の下で人外の者の断末魔の叫びが木霊する。鎌を持った死神のような低級悪魔、ヘル・プライドの身体は砕け散り、人界の媒介たる塵へと還る。 白き破壊の魔獣ベオウルフと融合したリボルバーナックルが唸る回転刃の動きを止めた時には周囲は消滅した悪魔の残した塵が山の如く積まれていた。 「こちらスターズ01 殲滅完了」 長く美しい青い髪を揺らした女性が魔獣を宿した鉄の拳を振り払い悪魔の残した塵を落としながら通信を入れる。 『了解。スターズ03も殲滅を終えてそちらに向かってます』 通信士が言った言葉の残響が消えぬ内にその場に金色の空駆ける道、エアライナーが出現する。 そして赤い髪をなびかせた戦闘機人の女性が現われた。 「遅えぞスバル、今日のタイムはあたしの勝ちだな」 「でも倒した悪魔の数なら負けてないよ?」 「…うっせぇ」 語り合う二人の女性、それは成長したスバルとノーヴェの姿である。 かつては美少女と呼べる容姿だった二人は今ではすっかり美女と呼んでも差し支えない成熟した女に成長をしていた。 「この調子ならライトニング以下の小隊にも応援の必要は無いみたいだね」 「ああ、でも双子がまた独断先行してるみたいだぜ」 「また? まったくあの子達は……どうせお兄ちゃんの方がオイタしてるんだろうけど…」 「だな」 そうして二人は今日も部下の少年と少女に頭を悩ませるのだった。 “あの人”の血を引く半魔の兄妹に。 スカリエッティがアーカムと結託して確立した悪魔の召喚と使役の技法は最悪の形で世界に広まった。 スカリエッティの残した資料が裏の犯罪世界に流出し様々な犯罪組織がこれを利用し始めたのだ。 時空管理局はこれに対し、かつてJ・S事件において悪魔との戦闘を多く経験し事件を解決に導いた機動六課のメンバーと伝説的な活躍をした魔剣士に部隊の再編成を命じた。 そうして生まれたロストロギアの管理と対悪魔戦闘のエキスパートが集まった最強最高の多目的精鋭部隊、それこそが現在の機動六課の姿である。 コンクリートとアスファルトが衝撃に砕け高熱に溶けた市街地の一角。 凄まじい激戦が繰り広げられたと思われる様を呈するその場所にひどく場違いな軽い口調の声が響いた。 「It’s cool(イカスぜ)、派手なパーティーだったな」 桜色の髪の少年はそう言いながら手にした炎の魔剣を振り回し、燃え盛る炎で宙に赤い軌跡を描く。 彼の周囲には数多の低級悪魔を倒した際の塵が溢れ、さらには斬り刻まれた巨大な悪魔の身体が燃え盛り横たわっている。 そして魔剣を回す少年に美しい銀髪の少女が手にした妖刀を鞘に収めながら呆れた口調で声をかけた。 「ネロ兄様、少し先行しすぎです。これではまたエリオさんに怒られますよ?」 「なんだよアンジェリカ、お前は少し真面目すぎだぜ。ダンテ叔父さんが言ってたろ? パーティーは楽しめってよ」 少女の言葉に少年はあくまでも軽く返す、だがそんな二人をよそに倒した筈の悪魔の巨体が蠢く。 「ぐるうああああっ!!!」 そして恐ろしく低い獣染みた雄叫びが響き、羊の様な頭を持つ悪魔“ゴートリング”が身体を起こし、翼をはためかせ宙に飛び上がると同時に魔力で練り上げた火球を二人へと吐き出した。 ネロと呼ばれた桜色の髪の少年は笑みさえ零しながら敵の火球を母から授かった炎の魔剣レヴァンティンで斬り裂いて打ち消した。 アンジェリカと呼ばれた銀髪の少女は父から授かった魔を喰らう妖刀閻魔刀を翻し、空間を斬り裂いて魔力の刃を悪魔に見舞う。 その反撃は神速とも呼べる速さであり、二人の剣技を受けた悪魔ゴートリングは絶叫を上げる暇も無く巨体を刻まれて絶命した。 「Sweet dream(オネンネしてな)! まったく大したこと無ねえなぁ、おい」 ネロは軽く笑いながら手のレヴァンティンに纏わせた炎を払う。 だがアンジェリカは近づく殺気と魔力を敏感に察知して閻魔刀に手をかけて呟いた。 「ネロ兄様……そうでも無いようですよ」 すると突如としてネロとアンジェリカの周囲に邪悪な気配と瘴気が溢れる。 そして今までの比でない程に大量の悪魔が現われ、二人を十重二十重と囲い込んだ。 無数の悪魔の中には死神の長とも呼べる上位級悪魔ヘルバンガードやデスサイズ、そして雷撃を纏う悪魔“ブリッツ”といったものも混じっており、その悪魔達の身体から立ち上る魔力が空気を歪めていく。 「こりゃまた…こいつらよっぽど俺達が好きみたいだな」 「ネロ兄様、冗談抜きで危険な状況ですよ? 軽口は控えて下さい」 二人は背中を合わせて周囲の悪魔を一瞥し、この窮地を脱するべく互いに莫大な魔力を消費する大技を行使する算段を考える。 だがそれは杞憂に終わった。 何故ならば、二人の上司にして時空管理局の中でも最強の誉れ高き悪魔も泣き出す程に強いストライカー達が来たのだから。 「フリージングブレス!!!」 上空に突如として現われた三つ首の氷竜がその上に跨った竜巫女の呪文の言の葉に従い、凍気の魔力で作られた巨大な氷塊を無数に撃ち出して無数の悪魔達の身体を凍り付かせ、その動きを封じる。 そして氷竜の巨体の上から一人の魔道騎士が手の槍型デバイスの推進器(スラスター)で唸りを上げ、時を加速しながら飛び降りた。 「時よ加速しろ! クイックシルバー!!」 次の瞬間には槍騎士の身体は常人には視認不可能な程の速さにまで加速され、音速を超える速度で悪魔達の身体を微塵に刻んでいく。 超加速の斬撃を終えた槍騎士が着地し、加熱した自身のデバイスから大量のカートリッジを排夾し焼け付く刀身を冷やす。 その槍騎士の背後から生き残った悪魔達が彼に殺到した、だが悪魔達の攻撃は虚しく空を切る。 それは影を操る双銃の使い手が作り出した幻術であった。 彼女の作る幻は人間だろうが悪魔だろうが誰の目をも惑わす世界最高クラスの精巧さである、この程度の悪魔に見抜ける筈もない。 「ドッペルゲンガー……アフターイメージ発動」 彼女は静かにそう呟くと、この十数年でその数を最大5つまで増やした実体を持つ影の分身アフターイメージを作り出す。 「クロスファイアシュート!!!」 そして、影の分身のものと合わせて500発は軽く超える誘導弾の雨を降らせる。 その無慈悲な魔力弾の雨は残った悪魔の全ての頭を正確に撃ち抜き絶命に導く。 瞬時にして無数の悪魔は全滅し、鏖殺は一瞬で完了する。 「まったく……また今日も独断先行かネロ? それにアンジェリカもだ、ちゃんと止めろと言っただろうが」 「その……すいません」 アンジェリカは直属の上司である槍騎士に叱られてその美しい銀髪の頭を俯けてしょげる。 その槍騎士とは十数年の時を経たエリオ・モンディアルの姿であった。彼は長身と燃えるような赤毛を持つ美丈夫へと成長していた。 「エリオ君、まあそのくらいで」 そこに巨大な三つ首の氷竜に跨った竜巫女が現われる、それこそ美しく成長したキャロ・ル・ルシエである。 彼女の跨る氷竜フリードリッヒもまたかつての体躯を超える巨体へと成長していた。 「いや~さすがキャロさん♪ 話が分かってる」 「でも勝手に先走るのは問題だから後でバージルさんに言っておくよ?」 「げえっ! 親父に言うのはちょっと…」 「いいえ、ちゃんと言っておきます」 ネロはキャロの言葉にうろたえるがキャロは笑顔できっぱりと答える、そこにオレンジ色の髪を揺らした双銃の使い手が影の分身と幻術を解除しながら近づいて来る。 「そうよネロ。あんたは毎回バカ騒ぎしてんだから、たまにはバージルさんにでも叱られなさい!」 「ティア姐さんまで…そんな事言わんで下さいよぉ」 「うっさい、自業自得でしょ」 それはかつての幼さの面影を残さない程に大人の女に成り、昔より幾分か髪を伸ばし ティアナ・ランスターの姿である。 ティアナは今では立派に機動六課付きで務める敏腕執務官を務めるようになっていた。 「不出来な兄ですいません…」 「アンジェが気にする事ないわよ……っていうかむしろ悪魔狩人の叔父さんの方が元凶な気がするけどね…」 ティアナは頭を下げるアンジェリカをなだめて、彼らの叔父で赤いコートを着た最強の悪魔狩人の姿を思い浮かべた。 その5人の下に突如として強大な魔力が接近し、天空から悪魔の巨大な影が踊りかかった、彼らは直前に感じた敵の魔力を感じて身を翻してその攻撃を間一髪で回避する。 その悪魔の落下の衝撃でアスファルトがめくれ上がり大きなクレーターが生まれる。 「ぐはははは! 見つけたぞスパーダの血族! そして悪魔に仇名す愚かな人間どもよ!!」 地に轟くような低い声を響かせながら現われたのは、全長20メートルは在ろうかという巨体を持つ上位悪魔だった。 普通ならば常人はその強大な魔力や巨体に恐怖するところだが、ネロ達機動六課のメンバーは何故かその悪魔に哀れんだ眼差しを投げかけた。 「は~…間が悪いヤツねぇ…」 ティアナのその言葉に悪魔は不可解そうな顔を浮かべた、普通なら逃げるなり戦闘態勢を整えるなりするだろうにティアナ達はその場で呆れた顔をして立ちすくんでいるのだ。 「何? 貴様ら何を言っておる…」 その悪魔が言葉を言い切ることは無かった。 何故なら、空駆ける魔力の道ウイングロードの上を一人の女性が白滅の魔獣を宿した鉄拳を振りかぶって最高速度で近付いて来たのだから。 純白の羽根を舞い散らせながら天にかかる道を駆けるその姿は幻想的でさえあった。 「ディバインバスタアアァァァ」 魔獣の顔を模した追加装甲に覆われた拳が振りかぶって悪魔の身体に叩きつけられ、青き魔力波動が収束していく。 「バアァァストオォォォ(爆)」 女性の瞳が金色に輝き、彼女の持つ戦闘機人としての先天的なIS(固有技能)振動破砕の超振動が両の拳に巻き起こる。 「オシレエエェェショオオオォォン(震)!!!!!」 脚部装甲から伸びたスパイクが後退を殺し、魔獣と融合した鋼の拳が放つ極大の魔力波動に振動破砕の超振動が完璧なタイミングで発動する。 そして半径数百メートル以内の空気がまるで絨毯爆撃でも受けたかの如く爆音に震えた。 攻撃の直撃を受けた悪魔は悲鳴すら上げる暇も無く粉微塵と散り消えて消滅する。 これこそが彼女の持つ最大最強の大技“ディバインバスター・バーストオシレーション”。 この技を受けて生きていられる生物などそうはいない、それは魔界の上位悪魔とて例外ではなかった。 「スバル、バーストオシレーションはやりすぎよ…」 「しょうがないよティア~、強そうな悪魔だったし。それにベッキーも今日は絶好調だし」 「まったく…アンタはいつもそうなんだから……」 ティアナと語るこの女性。 彼女こそ美女へと美しく成長し、最強の魔道師の一人と呼ばれる程に強く美しく成長を果たしたスバル・ナカジマである。 彼らは数百体の悪魔を殲滅し終わっても傷一つ無く疲労も皆無に近い、正に悪魔も泣き出す強さである。 その彼らの下に空中にモニターが展開されてロングアーチから通信が入った。 『こちらロングアーチ。悪魔を召喚していると思われる敵魔道師の動きを補足しました。現在そこから5キロ西方を移動中です。 さらに東南・南西方面にも大量の悪魔を召喚して事態の撹乱を狙っているようです。召喚された悪魔にはスターズ03以下のメンバーが制圧に向かっています』 その通信を受けたティアナは即座にその場の全員に指示を飛ばす。 「了解。私とスターズ01・02にライトニング01・02は敵魔道師の逮捕に西方に、ライトニング07と08は召喚された悪魔の殲滅しているスターズ03以下の隊員の所に救援に行って!」 「あいよ~♪ ライトニング07了解」 「ライトニング08了解しました」 その指揮にネロとアンジェリカは即座に返して転移魔法を行使しようとする、だがそこにティアナが声を掛けてきた。 「ネロ、ノーヴェ達に迷惑かけるんじゃないわよ!」 「分かってますよ、ティア姐さん」 ネロはその言葉に軽く笑みで返す、ティアナはこの緊張感の欠けた部下に呆れた顔をしてアンジェリカに視線を移した。 「まったく……アンジェ、悪ノリしないようにちゃんと見ててあげてね?」 「畏まりました。なにかあったら幻影剣でも刺しておきます」 「っておい! シャレにならねえぞそれ…」 「はい。冗談ではありませんから」 そんな冗談めいた会話をして、ネロとアンジェリカは父譲りの空間転移でもって現場に飛んだ。 「ほんじゃノーヴェさん所に行ってきま~す」 「行ってまいります」 そしてスバル達もまた本命の敵魔道師を追うために駆け出す、そんな中でスバルがふと口を開いた。 「でもネロは本当にヤンチャだよね。かなりダンテさんに影響されてるし」 「まったくよ、あれでアンジェと双子なんて信じられないわよ。なんだかバージルさんの苦労が分かるわ…」 ティアナはそう返しながら魔剣士と烈火の将の間に生まれた双子の事をしばし語る。 一方、現場周辺の六課メンバーの下に向かって転移魔法を使ったネロとアンジェリカはどういう訳か敵に召喚された大量の悪魔の群れの只中にいた。 「はぁ……なんでネロ兄様はいつもトラブルばかり呼ぶんですか?」 「俺の責任か!? まあ転移座標を選んだのは確かに俺だけどよ、でも詳しい座標設定すんのって結構めんどくせえんだよこれが」 「普通はロングアーチに位置を確認してから座標設定するでしょうに…」 そんな会話をしながら二人は襲い掛かる悪魔を次々に斬り伏せる、しかしあまりに悪魔の数は多く、顔に多少の苦味を帯びていく。 「スパァアァダァ」 「ヤツの血の匂いだ」 「スパーダの血筋ぅぅ、殺すぅぅう」 スパーダの血族を怨む悪魔達は口々におぞましい響きで呪いの言霊を吐きながら山と群がる。 その数の多さは、いかに強大な魔道騎士であろうとも骨が折れる程に大量であり若き戦士を疲弊させていく。 「まったくよぉ。合ったことも無えジイサマの事で怨まれちゃあ、敵わねえぜ」 「兄さま……お父様が聞いたら大変ですよ?」 「あの親父が? どうせ今頃は他の現場で大忙しさ、俺たちなんざ見ちゃいねえよ」 そんな彼らの様子を本部でモニターする機動六課ロングアーチの面々、その中で手のかかる自分の子供や成長した弟子達を見守る男が一人。 後ろに撫で付けオールバックにした銀髪に壮年の渋みと美貌を持つ伝説の魔剣士バージルである。 そんなバージルに通信士の一人が声をかけた。 「バージル隊長、よろしいのですか? 今の戦況ならスターズ・ライトニング分隊からノーヴェさんとルーテシアさんを派遣できますが…」 「構わん、スターズ・ライトニングにはそのまま敵戦力の殲滅を向かわせろ」 「……分かりました」 通信士の言葉に冷たく返すバージルだが、なにもネロとアンジェリカを心配していないのではない。 むしろ誰よりもネロとアンジェリカの身を案じている、しかしその想いよりもさらに強くあの二人を信じていた。それ故に二人に救援を送ることはなかった。 そして二人はその父の想いに応えるように困難を斬り抜ける力を見せる。 「こうなったら“アレ”行くかアンジェリカ?」 「そうですね。出し惜しみはできませんから…」 ネロは不敵な笑みと共に大量のカートリッジを排夾し、手のレヴァンティンに魔力を込めてその形を変形させる。 それは蛇の如き連結刃の形態、レヴァンティンの第二の形であるシュランゲフォルム。 その長き刃の鞭は業火を刀身に宿して周囲の悪魔達に踊りかかる。 「それじゃあ盛り上げて行くぜぇ、アンジェリカッ!! Shall we dance?」 ネロの言葉と共に連結刃の刃は高速で舞い踊り次々に無数の悪魔を斬り刻み、さらに刀身に宿した炎で焼き滅ぼしていく。 それはまるで轟炎を纏いし火龍の演舞、連結刃の舞いは美しいまでの斬撃と炎の残像で眩いイリュージョンを披露する。 そしてアンジェリカもまた、兄の猛攻に応えるように抜刀の型をした閻魔刀に莫大な魔力を込めていく。 それは父の振るった最強の魔の刃、閻魔刀を用いた最強の技の一つ。 広域次元斬の刃である。 「ええ、兄さま。刃の舞いで良ければご一緒しましょう」 兄の言葉に答えるアンジェリカの小さな呟きと共に閻魔刀から放たれた魔力の刃は空間を斬り裂き、異様な音を響き渡らせて球状に抉られた魔刃で以って数多の悪魔の身体を刻んでいく。 回避も防御も叶わぬ程の威力と攻撃範囲を誇る広域次元斬の刃は一片の容赦も慈悲も無く数多の悪魔を屠り尽くす。 シュランゲフォルムの連結刃と広域次元斬の刃の嵐は瞬く間に周囲の悪魔達の身体を斬り刻んでいく。 凄絶なる剣舞の後には桜色の髪に炎の魔剣を振り払う烈火の将の息子と、風になびく銀髪に魔を喰らう妖刀を優美な所作で鞘へと収める魔剣士の娘の姿だけが残った。 「ふぅ…まったく心配かけおって…」 その二人の様子を眺めていたバージルは小さく溜息を吐いた、そして彼の隣に立っていた妻は子供達を心配する夫に苦笑しながら言葉をかける。 「二人とも相変わらず土壇場の爆発力は凄いな」 「シグナム、だからといってあんな風にすぐに大技に頼るようでは未熟も良い所だぞ」 「そう言うなバージル、あの年であそこまで戦えれば十分一流だろ?」 「……そうだな…」 「そうだとも」 二人はそう言ってモニターに視線を移す。 そこには自分達の子らが勇敢に剣を振るう姿がある、二人はそっと寄り添いながら子らの勇姿を見守った。 それは悪魔の悪戯か、それとも神の祝福か。 本来は子を成さぬ筈の烈火の将は、新しい命をその身に授かりそして産んだ。 烈火の将と闇の剣士の間に生まれた子らは彼らの全てを受け継いだ。 父の持つ悪魔の力、母の持つ炎の力、だが彼らが何より受け継いだのはその気高き正義の心。 伝説の魔剣士バージルとその妻烈火の将シグナムの子らもまた、祖父スパーダそして両親と同じく英雄として永く語り継がれるだろう。 かつて魔界より人界を救ったスパーダの血筋と誇り高き魂は受け継がれていく、最強の魔剣士の系譜として。 終幕。 勝手に作ったオリキャラ紹介。 「ネロ・ギルバ」 母親であるシグナムから桜色の髪とレヴァンティンを受け継いでいる。 叔父であるダンテの影響を受けまくっており、ロストロギアの捜索も悪魔退治も純粋な楽しみでやってるヤンチャボーイ。 バリアジャケットは親父や叔父のようなコートで色は黒、ネロ(イタリア語で黒の意味だったか?)なだけに。 戦闘スタイルは母譲りのレヴァンティンで燃やしまくり&叔父譲りの何でも屋的な総合スタイル、ダンテから貰った魔具や銃火器を使ってそうなイメージで。 名前はDMC1のバージルの名前であるネロ・アンジェロから、DMC4の主人公とは無関係です……念のため。 設定年齢14歳前後、脳内CV関智一 「アンジェリカ・ギルバ」 父親であるバージルから銀色の髪と閻魔刀を受け継いでいる。 借金まみれなのに全然働かない叔父と、その叔父に影響されてる兄に呆れながらも注意したり突っ込みを入れる常識人、そしてたぶん親父であるバージルと同じくツンデレ系。 バリアジャケットは母のものに類似(アギト融合状態の袖なしバージョンみたいな)、なので生太股を披露しまくり。 戦闘スタイルは父譲りのポン刀魔人、基本的に容赦なく敵を刻みまくりな恐い人。 あと幻影剣を鬼のように乱射して串刺し磔の刑にする。 兄と同じく名前はDMC1のバージルの名前であるネロ・アンジェロから。 愛称はアンジェ。 双子なので設定年齢も兄と同じ、脳内CV沢城みゆき ついでの脳内設定。 新生機動六課前線、通称Devil Hunters。メンバーは以下の通り。 スターズ分隊 01スバル、02ティアナ、03ノーヴェ、04ウェンディ、05ディード、06オットー、以下20まで若手局員。 ライトニング分隊 01エリオ、02キャロ、03ルーテシア、04チンク、05セイン、06ディエチ、07ネロ、08アンジェリカ、以下20まで若手局員。 その他旧六課隊長メンバーも含めて魔道師は多数在籍。 目次へ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/248.html
見学も進んでいった頃、はやてが 「ほな、ちょっと派手なもんでも見にいこか」 と、いきなり出てきた。 案内されたのは時空管理局自慢の訓練スペース。 ライトニング、スターズの新人フォワード達が様々なパターンで対ガジェット戦術の訓練をしている。 エリオが最後の一つを貫いて破壊。 指導するなのはとフェイト、それに観測のシャリオ達の所に戻ってくる。 「みんなお疲れ」 「よくなったね。新記録だよ」 「やったぁ」 スバル達は飛び上がって喜ぶ。 「ふっ」 わざとらしく鼻で笑う音が聞こえてきた。 あからさまにあざけるが含まれている。 「まだまだだな」 「なによ」 一転して機嫌の悪くなったティアナがグゥを見下ろした。 「あの程度で手こずっているようでは」 「ならなに?あなたなら、もっとできるって言うの?」 「まあな」 傍目から見ても険悪な二人の間にはやてが割ってきた。 「まぁ、まぁ二人とも。じゃ、グゥちゃんやってみるんか?」 「望みとあらばな」 「部隊長、いいんですか?」 と言いながらもシャリオは設定をはじめている。 「かまわんよ。さ、やってみよか」 「じゃ、はじめますね」 シャリオがキーを押すと遠近に無数のがジェットがあらわられた。 「あたし達がさっきクリアしたのと同じね。見せてもらいましょう」 ティアナが腕組みをして、グゥの後ろに立っている。 「じゃ、スタート」 グゥが服の中からなにかを取りだした。 ぶんぶん振り回していてなにかはよくわからない。 「ここんとーざい」 「オッケー。ボス」 びしっと止める。 グゥの周りに無数の光球ができて飛んでいく。 それは、見えるがジェットはもちろん隠れて視認できないガジェットまで全てAMFをものともせずに破壊していった。 「すごい・・・最高スコアです」 つぶやきながら映像を再生するシャリオ。 「なぁなぁ、ここんとこよーみせて」 食い入るように映像を検証するはやて。 「ま、まけたわ・・・」 がっくりと膝をつくティアナ。 ハレはグゥの成果に驚いてはいなかった。 グゥの振り回していたものを凝視していた。 ピタリと止められたそれは今ははっきりとその姿がわかった。 それはビシッと背広を着込んだ筋肉質で禿頭でひげ面の大男だった。 「おい、それいったい何なんだよ」 「ボッチャン、ワスレタンカ?ぼくヤ。ボディーガードノクインシー・ポーター(以下QP )ヤガナ」 「いや、そういう事じゃなくて・・・今日もステッキのバイト?」 「チャウネン」 「じゃあ・・・」 「キョウハ、インテリジェンスデバイスのバイトヤネン」 「インテリジェンスデバイス・・・どこが?」 グゥが口をはさんだ。 「喋る」 「喋ればいいってもんじゃないわぁあああっ」 向こうでは、はやてとシャリオが顔をつきあわせている。 「完全自立型のインテリジェンスデバイス。めずらしいですね」 「せやな。あんなに大きいのは初めて見た」 「いや、他に言うことがあるだろ」 QPはなのはの見ていた。 「ボッチャン、チョットシツレイスルワ」 大きな体を揺らしてなのはの前に行く。 「あのぅ・・・」 自分をじっと見下ろすQPにおずおずと声をかける。 「オヒサシブリデス」 「あの、なのはさん。お知り合い?」 なのはは横で結んでいる髪が遠心力で水平になるほどに勢いよく首を横に振って答える。 「レイジングハートハン」 「そっちかよ!!だいたいクインシーとレイジングハートにどんなつながりがあるんだよ」 「レイジングハートハンハ、ぼくノ指導教官ナンヤ」 「は?」 「アレハナ・・・・・」 回想シーン 大勢のデバイス達が並んでいる。 その中にはマッハキャリバー、クロスミラージュ、ストラーダ、ケリュケイオンやクインシー・ポーターもいる。 彼らの前を歩き、レイジングハートは声を張り上げていた。 「わたしが訓練教官のレイジングハートである!話しかけられたとき以外は音声を発するな!ノイズをたれる前と後に“サー”と言え 分かったか、石ころども!」 「Sir,Yes Sir」 過酷な訓練がはじまる。 デバイス達は泥まみれになり、傷を作り、無様に倒れていく。 「貴様ら真空管どもが俺の訓練に生き残れたら、各人がデバイスとなる!その日までは漬け物石だ!次元世界で最下等のケイ素だ!」 「貴様らはデバイスではない!哺乳類の糞をかき集めた値打ちしかない!」 「俺は厳しいが公平だ!差別は許さん!尿酸結石、シスチン結石、リン酸結石を、俺は見下さん!すべて・・・平等に価値がない!」 「俺の使命は役立たずを排除することだ!愛する次元管理局の石綿を!」 「分かったか、コプライト!」 「Sir,Yes Sir」 回想シーン終わり 「ト、イウワケナンヤ」 「なぁんだそりゃぁああああ」 「レイジングハートが私の知らないところで私の知らないことを・・・・・」 ハレの横で頭を抱えるなのはの肩が叩かれた。 なのはが振り向くとはやてが満面の笑みでそこにいた。 「なのはちゃん、お手柄や」 「え?」 「グゥちゃんや。すごい逸材や。うちに来てくれたら、戦力に厚みが出ること間違い無しや」 「え・・・えーーーと」 フェイトもやってくる。 「うん、私もそう思う。私、昔のなのは思い出したし」 「ええ?私あんなふうだったの?」 「うんうん、あの砲撃。その通りや」 なのははガマのように冷や汗をたらし、ハレの両肩をがしっとつかむ。 「ハレ君!」 「はい」 「ハレ君もうちに来て!」 「いや、俺普通の人だし・・・」 「来て欲しいの!」 「魔法使えないし・・・」 「私を見捨てないで!!私1人じゃ、グゥちゃんのこと絶対無理!」 「俺の存在意義って、グゥ関連だけですか!!!」 その後、はやて説得に全力を尽くすと言うことでとりあえず落ち着いたがハレはしばらく落ち込んでいた。 前へ 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/nwxss/pages/11.html
投稿された作品の一覧です。 タイトル クロス元 備考 記号など ○○と秘密の本 コードギアス 反逆のルルーシュ涼宮ハルヒの憂鬱 英数字 3vs5 宰相編 セブン=フォートレス Fate/stay Nightwizard! Fate/stay night 予告のみ LEGEND OF MANA ~あるいはある異邦人の物語~ 聖剣伝説 LEGEND OF MANA NIGHT WIZARD cross period 武装錬金 あ行 青き薔薇の巫女 Yes! プリキュア5 紅と蒼と黒の円舞曲 アルシャードガイア 予告のみ アガートラムが多すぎる Wild Arms 2nd Ignition Wild Arms Advanced 3rd 全17話+外伝 悪夢を紡ぐもの 怪~ ayakashi~モノノ怪 予告のみ 妖(あやかし)が多すぎる~柊蓮司と夏目貴志~ 夏目友人帳 予告のみ 合わせ鏡のシンデレラ シンデレラ アンラ=マンユの魔王 コードギアス 異界の剣士と放浪の戦士 デルフィニア戦記 全1話 いくさ姫と剣の担い手 異界戦記カオスフレア 全1話 居酒屋ろんぎぬす 従者たちの哀歌(さぁばんつ・えれじぃ) 新感覚癒し系魔法少女ベホイミちゃん ウィザード無双~武将だらけの三国志魔法大戦~ 三國志9三国志大戦恋姫・無双 落とせる神と子 神のみぞ知るセカイ か行 吸血鬼が多すぎる ダンス イン ザ ヴァンパイアバンドヴァンパイア騎士(アニメ版) 巨獣の咆哮 フルメタル・パニック! ぐらすうぉーず。 銀魂 こどものじかん with NW こどものじかん さ行 志宝エリスと双子の貴石 舞-HiME(漫画版) 従者たちのの舞踏遊戯 ダブルクロス 予告のみ 聖剣/乱舞 Fate/stay night 全2話 それぞれの溜息の理由 真剣で私に恋しなさい! た行 だいすきなうた~Project S.D. II~ しゅごキャラ! 猛き風の戦士達 仮面ライダー 月と星と柊と 超女王様伝説エンシェント★クイーンセブン=フォートレス メビウス 全15話 とある偽善使いと魔剣使い とある魔術の禁書目録 とある魔剣の回顧録 Wild Arms 2nd Ignition 全1話 当校は魔法使いの多い学校ですから どうかそこは「はい」か「イエス」で諦めて下さい 絶望先生 全1話 東方ウィザード『柊蓮司と発狂弾幕』 東方Project となりの7Nさん となりのなにげさん 予告のみ な行 ナイトウィザード異聞-はわっとにょ~とPoooo!- デ・ジ・キャラットマイケル・ジャクソンズ・ムーンウォーカー(MD版) 予告のみ ナイトウィザードin住めば都のコスモス荘 住めば都のコスモス荘 ネギま!×ちびらぎ 魔法先生ネギま! は行 はじめまして幻想郷 東方Project パラダイスロスト異聞 仮面ライダー555 パラダイスロスト 薔薇乙女と夜闇の魔法使い Rozen Maiden ひいらぎがなく頃に ひぐらしのなく頃に 柊蓮司と雨の中の子蜘蛛 シルバーレイン 柊蓮司と終わらない明日 らき☆すた 柊蓮司と銀なる石の少女 ダブルクロス 柊蓮司と黒の騎士 セブン=フォートレス 予告のみ 柊蓮司と地獄の虚神 円環少女 柊蓮司と退屈なお茶会 AQUAARIA 柊蓮司の穏やか?な一日 みなみけ 柊 蓮司の魔剣が折れたようです サウザンドアームズ ま行 交わる“勇気”と“希望” Yes! プリキュア5 まほうせんせいと赤毛の悪魔 僕にお月様を見せないで僕の血を吸わないで 魔法使いたちの仮面舞踏会 ペルソナ3 桃月町の魔法使い的日常 ぱにぽに 全6話+ED や行 闇祓う光明 らき☆すた 「ゆにばーさる」と魔法使いの夏 ダブルクロス 全7話 よるのある風景 とある魔術の禁書目録魔法先生ネギま!月姫MELTY BLOODダブルクロス ら行 わをん
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/1202.html
人は色々な場所で自分が変わる、覚醒するという出来事がある、理系と思っていざサッカーやるとそっちの方が自分にあっていたり、 体育系と思っていたが科学分野で自分の才能を開花させる。だが人間だれしもそう開花できるとは限らない、何故なら自分が何を 秘めているか何て分からないからだ…そしてその能力を戦争で開花させる奴がいる… プロローグ ―――――某管理外世界研究所 「ロストロギア不正使用、ならびに非人道的人体実験の管理局法違反で、貴様を逮捕する!」 クロノ・ハラオウンは老人と思われる科学者にデバイスを向ける。 「我が崇高なる理念が分からぬ愚か者め!」 科学者は叫ぶ!そして科学者はクロノの拘束型魔法によって縛られる。 「そういった下らない理念や理想なぞ、後で存分に言えばいい!こちらクロノ・ハラオウン、 例の容疑者を捕まえた、直ちに連行します」 通信を送るクロノに科学者はニヤリと笑った。 「ククククク、だが我らの崇高なる理想を受けたものはまだ他にもいる!いずれ我々が望んだ悲願を叶える為にな…」 そして科学者は奥歯に仕込んだ何かが入った小さな袋を歯で噛み潰し… 「総統!我等の彼岸実現に失敗した私を許してください!ジークハイル!ハイル…ヒT…」 叫びあげると倒れた。 「いかん!毒を隠し持っていたか!」 「助かるか?」 「だめだ、即効性だもう助からん!」 「クソッ!」 クロノは壁を殴る、ようやく捉えることが出来た犯罪者が死を持って逃げ出したのだ、だがクロノは指示を出す。 「研究所の資料を全部持ち出せ、そしてこいつの研究レポートは絶対に見つけ出せ!」 「ハッ!了解しました」 そして部下を手分けさせ、研究所の資料を押収させる。それにしても…彼の悲願とは何だ?クロノは何かに取り付かれたような笑顔を 浮べ死んでいる老科学者を見つめる…まぁ所詮は下らないものだろう、そう判断し、天井を見上げた、そこには赤地に白い丸に卍を裏返しにした マークが描かれている旗が飾られてあった…。そしてクロノは後悔する、冷静になって研究所を調べなかったことを… ――――研究所 「間に合わなかったな…」 短髪で長身の女性は呟いた。 「ああ」 銀色の長髪で大きいコートがただでさえ低い身長をさらに低く見せている少女も同調するように言った。 「少なくとも護衛のガジェットを派遣していたが」 「相手はあのクロノ・ハラオウン率いる部隊だ、ガジェットだけでは無理だったか」 長身の女性と銀髪の少女は言葉を続ける。 「ドクター」 女性は通信で自分の生みの親を呼び出した、そして白衣を着た紫色の髪をした男性が出てくる。 「どうしたかね、トーレ」 トーレと呼ばれた女性は現状を伝える。 「そうか、彼は自殺したか…ふむ、彼の残した資料はあるかね?」 「分かりません、ですがほとんど押収されていると思いますが」 「そうか、まぁ少しぐらいは探索してくれたまえ」 「了解しました、ドクター」 通信をきると女性は少女と共に荒らされた研究所の探索にむかう。 「やはり、重要資料はほとんど押収されているか」 女性は呟く、その時少女が何かを見つけた、床下にレバーがあったのだ、そして少女はためらわずそれをひいた、 そして轟音がし、床下に階段が出てくる。訝しげな表情をしながらも二人は階段を降りて扉を開いた。 そして女性はドクターと呼ばれる男に通信を送った、そう彼の研究成果と思われる8つのカプセルがありそのカプセルの溶液にそれぞれ男が眠っていたのだ。 ――――某空間 「畜生!姿を表せ卑怯者!」 「ノーヴェ、顔出しちゃやばいッス!」 赤髪の二人の女性は土手の中で暴れていた、そう10対8の勝負でしかも相手は魔法に精通していないド素人のはず なのに…追い詰められていた。この戦いでにすでにセイン、オットー、ディエチ、ディードを失っていたのだ、 そしてディエチは自身が得意とする狙撃攻撃が全く同じ攻撃で返され戦闘不能に陥っているのだ。 「くそ、あんにゃろー、見つけたら真っ先に私の剛拳叩き込んでやる!」 「でも、見つからなきゃ意味ないッスよ」 そうやってやり取りをいるつかの間だった。 「暢気にお喋りか、随分と気楽なものだ」 ゲッとする二人の背後に銃型のデバイスと戦車砲をイメージにしたデバイスを装備した二名の男がいた。 「ゲ!やばいッス!」 「クソ、こうなれば」 赤髪の二人の女性は保持しているISで攻撃を仕掛けようとするが・・・ 「おせーよ」 二人の男性から放たれた攻撃であっけなく吹っ飛ばされる。 研究所で男を発見した短髪長身の女性は歯噛みする、まさか奴らがここまで出来るとは…、すでに四人の妹を失い、そしてついさっき二人の妹も失ったのだ、 奴らは狡猾であり、猟犬のように狙った獲物は確実に倒して行った、そして彼女も、相方と思われるピンク色の長髪をし、両手にブーメラン状の武器を装備した女性に念話を送る。 「見つかったか?」 「いや、見当たりません」 相手はどこかに隠れている、そう思ったときだ、上空から二つの影がこちらに迫ってきたのだ…狙いは…私じゃない!そして短髪の女性は長髪の女性に叫ぶ! 「いかん、避けろセッテ、狙い・・・」 言い切る前に二人の男から小型魔力弾がセッテと呼ばれる女性に振り注ぎ、セッテは被弾に耐え切れず落ちていった。 「クソ!ライドインパルス!」 短髪の女性は自身に搭載されているISを持って二人の男を追おうとした、高高度からの急降下によって速度はついていたが、充分追いきれる自身はあった、 そして追いつき攻撃を加えようとしたが、呆気なく回避される、そして一人の男が自分の背後に回りこむ、女性は自分の迂闊さを呪った、放たれる攻撃、 意識が吹っ飛びかける寸前男性は言った。 「僚機を失った時点で、お前は負けだ」 ――――スカエリッティ研究所 そこの主は今モニターに映っている光景を見て、白衣を着た男性は文字通り目を点にしていた。 何せ自分の傑作作品が呆気なく次々と潰されて行っているのだ、そして最後まで抵抗したチンクも袋叩きにされた。 「敵対勢力に損害なし…完璧にこちらの負けですドクター」 自分の秘書官を勤めている女性は事実を言う、しかし顔は引きつっていたが… 「うそ~~~ん」 ドクターと呼ばれた男はすっとんきょんな声を上げるが、同時に別の思考をする。あの科学者一体どんな奴を復活させたのだ?と、そして老科学者の 研究所にあった生体ポットと共にあった資料にはこう書かれていた ――――プロジェクト・ラストバタリオンと …話は少し遡る スカエリッティという科学者とクロノに捕まって自殺した科学者はプロジェクトFからの知り合いだった、 仲がいいというわけではなく双方とも利用しあう仲だった、そしてその老科学者はある実験を行っていた、 一般人に他から取り出したリンカーコアを植え付けると言う実験だ、だが、この実験は悉く失敗し続けた、 理由?一般人では膨大な負荷に耐えられないのだ、しかしその老科学者はその実験に成功した (まぁ其の過程で膨大な犠牲が会ったのは言うまでもない)それによりその老科学者は悲願の為にかつて自分の故郷であった 世界に戻り優秀な遺伝子を回収し、プロジェクトFならびに、今までの実験で培った実験の総力をあげて悲願成就の為の第1段階を行った、 しかしその企みは結局時空管理局にばれて阻止され→自殺というコンボに繋がった、その成果をトーレとチンクが確保した為、ちょっとした余興でと その第1段階を完成させたのだ。 …話を巻き戻す。 「終わりましたよ、ドクター」 一人の青年がドクターとその秘書官のいる部屋にやってくる、彼から発するオーラは独特のものであった、 そう長きにわたって死と戦争を掻い潜ったような… 「結果は知っていると思いますが」 「…君達の勝ちだな」 「ええ、そうです」 青年は当然のように答えた。 「で、どうだった?」 「筋は悪くはありませんでしたよ、ええと、トーレとチンクでしたっけ?彼女たちも中々のものでしたよ」 「まぁトーレは戦闘能力ではトップクラスなのだがな、全く君達はすごいよ、最初君達の経歴を見た時は疑ったよ…そんな人間がいるものかと」 「しかし、現実にいた」 「そうだな、認めざるえないよ ――――クルト・マイヤー」 ――――通路 「うぃ~~酷い目にあったッス!」 赤い髪の女性の片割れウェンディは至る所が焦げだらけの状態で呟いた。 「ちくしょ~~~あいつら今度やったときいはこの屈辱倍にして返してやる~~~!」 似たような状況のディードも呟いていた。 「やれやれお前たちもやられたのか?」 「「ト、トーレ姉もやられたん(すか)ですか」」 「ん、まぁな」 ウェンディとノーヴェも驚いた、二人ともトーレの戦闘能力が極めて高いことを知っている、 だからこそ彼女が落とされた事実にたいして驚愕した、そして彼女達の隣をガジェットが通る、 ガジェットにはクアットロが乗せられていた、だがそのクアットロはウェデンディ以上にあちこちに黒焦げが出来た上に、 口から煙を吐いて、手足が痙攣したように動いていた。 「クア姉もどうしたんですか?」 「ああ、何でもシルバーカーテンで産みだしたダミーごと吹き飛ばされたそうだ」 「「ゲゲゲゲゲゲゲゲゲ!!」」 驚く二人、だが二人とも内心「ざまぁみろ」とこっそり思っていたりもする。 ―――研究所 スカエリッティ室 「まぁ、汚いだろうが、掛けてくれたまえ」 スカエリッティと呼ばれる男は先ほどの男、マイヤーを自室の呼び出した、そしてビーカーを取り出し、 ブランデーを注ぐ、それに顔をしかめるマイヤーに対してドクターは 「ああ、安心しておけ、きっちりと消毒している」 スカエリッティはビーカーに注いだブランデーを飲み干す、それに安心したのかマイヤーもブランデーを飲み干した。 「全く、とんだ拾物だったよ君達は」 「はぁ」 「思い出すよ君たちが目覚めた時・・・」 「な、何で私が生きているんだ、とうかここはどこ!」 生体ポットから蘇った時、マイヤーは真っ先に叫んだ、そして復活した7人の男も似たような声を上げていた、 そしてドクターが何故目覚めたか、そして老科学者との繋がりなどを話した時だった。 「「「「あんのクソ爺!まだ第3帝国の残滓を引き摺っていいやがったのか!」」」」 「どうりで俺達の血液とか寄越せ寄越せ五月蝿かった訳だ!」 そして二人の男が叫んだ。 「「俺はフィンランド人だ!何でまたナチに協力しなきゃいけないんだ!」」 「「「「「「「「うがぁ~~~勘弁してくれ~~~!!」」」」」」」」 そうだこうだの騒ぎがあった、まぁ色々なゴタゴタがあって、スカエリッティの事を「変態博士」呼ばわりして さらにナンバーズを見てスカに対して集団リンチを加えたりしたのたが、何時の間にか8人の男性はスカエリッティファミリー の一員になっていった。 「君はあの老科学者の事知っているのかね?」 「ええ、知っていますよ、旧ドイツ第3帝国のフィンランド系ドイツ人の科学者、一時期オデッサと言う組織で活躍していましたが、ある日ばったりと居なくなった…」 「ふむ、資料を読んで君は彼が何を考えているのか分かったかね?」 そして吐き捨てるようにマイヤーは言った。 「第3帝国の復興、其の為尖兵となるクローン兵士作り、そしてアドルフ・ヒトラー総統の復活…おおまかそう言った所でしょう」 「ふむ、君にとって歓迎すべきことではないのかね?」 マイヤーの目を見てスカエリッティは自分が迂闊なことを言ってしまった事が分かった。 「確かに彼のおかげで祖国は復興しましたよ、ですがね、今更第3帝国の復興?冗談じゃありませんよ、 少なくとも復興した祖国が戦禍に巻き込まれるなんてもう勘弁願いたいですよ」 「そうか、すまなかったな」 珍しくスカエリッティは謝った。 「では、君たちはこれからどうするかね、リンカーコアを植えつけられた死者にして生者、いやクルト・マイヤー」 「まぁ今の居場所がここにしかないから…まぁ彼女達を鍛えるのも悪くはありませんよ」 「そうか…」 ―――後日 「君達にもバリアジャケットが必要だ、だから…」 スカエリッティはナンバーズが身につけているあれを取り出した、そして8人の男たちの顔は凍りつき…そして… ―――廊下 ウーノとチンクは歩いていた、チンクは不機嫌な顔をしていた。 「くっそ~~~~あいつら」 「どうしたのチンク」 「あいつら、発見者に対する敬意が微塵もない」 「姉と言っても確か彼らの方が長く生きているはずじゃ」 「それもそうだけどな、あいつら揃いも揃って私のことを『ああ、悪いちっこくて見えなかった』だの 『姉?おいおい、お前のようなまな板のチビが姉だって?姉と言うのはトーレやウーノみたいな奴が言うんだぜ』 とか『お前、好き嫌いはしちゃいかんぞ、背が伸びないからな』だとか、私が一番気にしていることを言いやがって! 私だって好きでこんな体しているわけではないし、好き嫌いもしてないし、そして…毎日牛乳飲んでいるもん!」 それに微笑を浮かべるウーノ。 「うわーん、ウーノ姉にまで…」 「御免なさい、チンク」 「ああ、そうだ、ドクターは?」 「ああ、あの8人のバリアジャケットを…」 「なぁそれってまさか…」 そう言った時である、スカエリッティが居る部屋から、一斉に何かが殴られる音が聞こえて… 「ご、御免これし(ゴス)、でもデザインは(バキ)、防御力も(メキャ)、性能も(グチャ)、本当だっ(ボカ)、ゆ、許してぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」 スカエリッティの絶叫が響き渡る。 「…救急箱必要かな?」 「いや、むしろ病院だな」 まぁ結局軍服をモデルにしたBJにしたそうな。 幾日が過ぎた――― 「うぃ~~~、訓練疲れたッス!」 「あいつら本当に容赦ないからな」 「まぁそれで私たちが強くなるからいいと思うけど」 「・・・・・・疲れた」 至る所傷だらけのナンバーズ達はうめいた、そうあの8人の男達が彼女らの教導官を勤めてから毎日過酷な日々を送る羽目になった、 まだトーレやチンクやセインなどは良かったが、悲惨なのはウェンディ、ノーヴェ、ディードとか新人(セッテはトーレの影響を受け継いだお陰で酷くはなかった) ナンバーズだった、8人も教導官が教えたこと、それは徹底したチームワークだった、個々の能力を闇雲に使っているだけでは意味がない、ならその能力を上手く 連携して使えば総合的な戦力が上がると…まぁそんなこんなでウェンディ達の戦闘能力や仲間達の信頼も上がっていった、ちなみにクアットロも段々丸くなっていたりもする、 何せしょっぱなからマイヤーに「猫かぶりも大概にせぇよ」と言われた上に、同じく訓練でルーデルと男に毎回悲惨な目にあっていたから。 ――――ウーノの個室 ウーノはベッドの中で目をあける、目に入った光景、そこには綺麗な肉体、適度な筋肉と余分な脂肪が一切ない体、熟睡している男とは何時間か前には熱く融けていた…。 何故…彼に惹かれたのだろうか?ウーノは思った、あの時チンクとトーレが拾ってきた生体ポットから真っ先に目覚めた男、その目は優しさと厳しさを持ち、そして何より 世界や人の汚さを沢山見て行った目…そして望んで復活したわけでもないのに自分の妹達の身を心配し、自ら教導という立場で鍛えて行った背中、本当はドクターの為に駒に 過ぎない自分が…と思ってしまう、だがドクターもそしてこの男も駒と言う言葉に拒絶反応を示した。そしてその男はやさしげな顔で言った「君は人間だ」と…それからかもしれない …ウーノは微笑むとその男の温もりに身を委ねた、自分とは違う立場、いつかは別れなければない…だけど、今はほんの一時の幸せに身を委ねるのも悪くはない… 再びウーノは目を閉じた、しばらくこうしてもらいましょう…マイヤー。 ――――研究室 「いいのですか?」 クアットロとトーレはさっきまでウーノとマイヤーがしていることについてドクターに問うた。 「別にいいと思うけど」 スカエリッティは素っ気無く言った。 「少なくともそれだけの自由ぐらい与えるし、君達だって別に構わないが…」 「はぁ」 「大体、私が仮にも娘のプライベートに突っ込むように見えるかね?」 「「見える(しかも盗聴してそう)」」(即答) 「き、君達私をそんな目で見ていたの?(してねーよ)」 「「うん」」(即答) 「ひ、ひでぇ」 「ん?ウーノ姉とマイヤーさんがどうかしたんスか?」 ウェンディは何を話しているのか分からなかった。 「いや、お前が知るにはまだ早い」 「そうですわね、ウェンディはまだまだオコチャマですから」 「クア姉子供っていうなッス!」 ――――教導団達 「出動が決まった」 クルト・マイヤーは7人の男達の中心にして話す。 「ようやくか…」 「目標は?」 「発見され、時空管理局に回収されたレリックの奪還、回収に向かったガジェットは全滅したそうだ」 「ということはかなり上級ランクの魔法使いが居ると言う事ですね」 「ああ、そうだな」 マイヤーは真剣な表情で言った。 「この作戦に参加するのは自由だ、参加するということは…」 「時空管理局に喧嘩を売ると言う事ですね」 一人の男が発言する。 「ああ、そうなる」 だが7人の男はみな同じ考えを持っていた。 「「「「「「「志願します」」」」」」」 ほうと呟くマイヤー。 「いいのかね?」 「ふん、どうせ我々は一度死んだ身、そして我々は今スカエリッティという場所に所属している身なら、その義務に答えるべきです」 「そうか…分かった、だが使用する魔法はすべて非殺傷、万が一に供えて殺傷式を持っていくがね、まぁ我々は古き遺物、 古きものが新しき者の未来を奪う事は極力避ける、いいな」 一斉に男達は立ち上がり敬礼する。 ――――転送ポート 「ではパンツァー・レーア(装甲教導団)行って来ます」 8人の男達はスカエリッティやナンバーズに向けて敬礼する。 ――――某世界 「レリックの確保に成功したか、さすがはクロノ、君のお陰でガジェットの殲滅に成功」 「煽てるなよヴェロッサ、まぁさっさと仕事終わらせて帰りたい」 ――――某世界、ちょっと離れた場所 「全員配置に付きました」 連絡が入る、そしてマイヤーの傍らにいる男が呟いた。 「奴ら勝ったつもりでいますよ」 「そうか…なら教育してやれ!」 マイヤーがそう指令すると男達は行動に移る…。 ――――聖王教会 「・・・管理局は滅びない、しかし大いなる困難が立ちふさがるだろう、勝者には栄光ある勝利が、 敗者には生以外すべてを失う敗北が・・・」 カリムは呻いた、何が起きようとしている? 装甲指揮官:クルト・マイヤー 黒い悪魔:エーリッヒ・アルフレッド・ハルトマン 300機撃墜の片割れ:ゲルハルト・バルクホルン 不屈なる殲滅者:ハンス・ウルリッヒ・ルーデル アフリカの星:ハンス・ヨアヒム・マルセイユ 鋼鉄の虎:ミハエル・ヴィットマン もう一人の白い悪魔:シモ・ヘイヘ 不動なる抵抗者:レミ・シュライネン 史実に存在した8人の男達によって歯車は大きく変わり始める… リリカルなのは ストライカーズ パンツァー・レーア 1話:滅びたもの者へ捧げるセプテット 時空管理局そして高町なのは達にとって最悪の日が訪れる… 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/2781.html
「所詮レリックしか持たない者に、私を倒すことなど出来はしない」 圧倒的な力を持って、桁違いの強さを見せつけていたギンガ・ナカジマ。あらゆる敵を 打ち破り、無敵と思われた彼女の存在を、聖王ヴィヴィオは一撃で消し飛ばした。 ギンガは確かに強かった。その実力には他者を寄せ付けないほどの圧倒感があり、 ヴィヴィオが聖王として覚醒する前までは、彼女こそが間違いなく最強であったろう。 「私が負けるはずはない。私は全ての次元世界を統べる王、聖王なのだから」 だが、覚醒した聖王の前に彼女の力は無力だった。ヴィヴィオもレリックの保有者では あるのだが、それは聖王として覚醒するために必要だったに過ぎず、覚醒さえしてしまえ ば、聖王の鎧と自身を繋ぎ止める以外の用途はない。 聖王の強大な力の前には、レリックが持つパワーなど何の問題にもならなかった。故に、 レリックの力に頼るしかなかったギンガは、それを必要としない聖王に勝つことが出来な かったのだ。 「愚かな戦闘機人は滅び去った」 お前はどうする? 眼前に佇む最後の敵を、聖王は見据えた。 「…………」 ゼロは片手に持つゼットセイバーを構え直し、あくまで戦う姿勢を崩さなかった。力の 差など、戦う前から分かり切っているのに。 戦うことを止めようとしない敵に対し、聖王は呆れることはなかった。愚かだと思うこ ともなかった。聖王ヴィヴィオは、彼がそういう選択をするであろうと判っていたのだ。 「今まで集めてきたナンバーズの先天固有技能、それを全て出し尽くしたところで、お前 は私に勝てない」 イノーメスカノンでさえ傷一つ付けられなかった聖王に、他のISなど通用しないだろう。 そんなことは、ゼロも理解している。ゼットセイバーもバスターも、ヴィヴィオにとっ ては玩具も同じだ。 「言いたいことは、それだけか?」 ゼロは、イノーメスカノンを拾い上げた。また砲撃を行うつもりなのか? ヴィヴィオ の目が鋭く光る。 「こんなものに、もう用はない」 一閃、ゼットセイバーがイノーメスカノンを両断した。 自ら強力な武器を破壊した行為、聖王ヴィヴィオはゼロの真意が読めなかった。虚勢か、 それともこちらを馬鹿にしてるのか。 聖王である、ヴィヴィオを。 「殺す―――!」 ゼロとヴィヴィオの、最初で最後の戦闘が開始された。 第24話「強さの意味を、知りたくて」 上昇を続ける聖王のゆりかご、その周辺では未だに激しい戦闘が続いていた。ルーテシ アと召喚虫軍団が撤退し、ギンガという指揮官を失ったガジェット部隊は、地上部隊によ る相次ぐ猛攻を受けながらも反撃や抵抗を行っている。単純機械であるがジェットは、命 令があるまで戦いを止めることが出来ないのだ。 「ゆりかごの外壁に空いたどでかい穴から、武装魔導師隊を送り込むことは出来るか?」 旗艦アースラにあって戦闘指揮を続けるはやては、今こそ敵を倒す好機だと確信してい た。 しかし、好機を必ずしも活かせるとは限らない。 「地上部隊も、とっくに限界を超えています。一度後退させて、戦力の再編を計るべきで す!」 シャーリーの声は悲痛としか言い様のないほどに震えていた。オペレーターである彼女 は、次々に報告される負傷、戦死などの報告に精神が痛めつけられていた。減っていくの だ、彼女が見つめるモニターにある数字が、地上部隊の人員数が。 「けど、ここで退いたら先に敵が体勢を立て直す恐れも……ッ!」 言いかけて、はやての身体がぐらついた。 「はやてちゃん!?」 指揮座に手を突き、何とか倒れること防いだはやて、リインが心配そうに声を上げる。 良く見れば、はやての立つ床に何かが流れ落ちている。 「血が、でてます」 「ん……あぁ、これか」 隠していたつもりはなかったが、はやてはばつの悪そうな表情を浮かべた。はやての傷 は、冷凍処理を施すには大きすぎた。癒えないままの傷口が開いて、血が流れ出している のだ。 「す、すぐに医務室へ、シャマルに連絡を――」 動揺するリインを、はやては手で制した。 「あかん、それはダメや。シャマルがこの事を知ったら、私を気絶させてでも艦橋から遠 ざける」 それでは、指揮が出来なくなる。はやては唇を噛みしめながら、痛みにジッと耐えてい る。 力の入らない足腰に、ふらつく身体。いつ気を失ってもおかしくない。 「まだや、まだ、倒れたらあかん」 しっかりと目を開けて、足腰を踏ん張らせる。 指揮官として、総隊長として、そんな義務や責務じゃない。 「リイン、私はみたいんや。この戦いの終わりを、最後の最後まで自分の目で」 戦いの果てに世界が変わるのか、八神はやてという一人の人間が知りたがっている。 「アイツを……たった一人で世界の変革に立ち向かおうとしているアイツを、私は最期ま で見届ける、見届けたい!」 だから、必ず勝ってこい。 口には出さず、はやては心の中で叫んだ。 その頃、アースラの医務室ではシャマルが重傷患者の治療に追われていた。はやてがシ ャマルに連絡するのを拒んだ理由の一つに、彼女の手が離せない状況にあったことがある。 しかし、それでもはやての傷が悪化したと聞けば、彼女は主への忠誠心を優先しただろう。 故に、はやてはシャマルにだけは伝えるなと釘を刺したのだ。 「ディードとセッテ、大丈夫かな……」 医務室の外に、二人の少女が立っていた。それぞれ壁に背中を預け、疲れ果てた表情と 声だった。 「あれだけの傷、ここまで持ったのが奇跡だよ」 セインと、ディエチだった。重傷の姉妹を連れて脱出した二人は、アースラに保護されて いたのだ。この戦場においてアースラ以上に医療設備の整った場所はなく、二人が艦にい るのはある意味で必然だった。 「ねぇ、セイン」 気まずそうに、ディエチが口を開く。彼女は損傷らしい損傷もなく、治療を受けていない。 「なにさ?」 三人を連れてのディープダイバーは流石に堪えたのか、セインはくたびれた感じで床に へたり込んでいく。 躊躇いながら、ディエチは言葉を続けた。 「どうしてあたしを、助けてくれたの?」 セインが軽く、ディエチの顔を見上げた。 何がいいたいのかは、判っていた。 「あたしは、あなたを……」 ゆりかご内で蹲っていた自分の所へセインが来たとき、ディエチは心の底から驚いた。 彼女は自分の手を取って、脱出を諭したのだ。 自身を殺そうとした妹を、助けた。 「助けて貰う資格なんて、あたしにはなかったのに」 項垂れるディエチに、セインは起ち上がった。 軽く、本当に軽く、妹の肩を叩いた。 「お姉ちゃんだからさ、私は」 微笑むセインの笑顔は、ディエチにとって眩しすぎた。眩しさに目を反らしながら、彼 女は小声で呟く。 「先に出来たのはあたしじゃないか」 「細かいことは気にしなくていーの! それに、ディエチのことを助けるように言ったの は、ゼロだから……」 その名を口にして、セインは小さなため息を付いた。心配なのだろう。 「ディエチには、実は感謝してるんだ。あそこであなたに撃たれなかったら、私はここま で来られなかったと思うから」 そういった意味では、ディエチに命じたスカリエッティも同じことなのかも知れない。 撃たれたときは絶望にその身を支配されたセインであったが、今は別の希望を手に入 れている。 「あの人は、きっと大丈夫だと思う。戦って、しみじみ思った。あぁ、この人には勝てな いなって……正直、あの格好良さには抗えない」 後半、何やら聞き捨てならないことをディエチが呟いた気がする。 「ディエチ、今何か変なこと言わなかった?」 「え? いや、その、別に何も言ってないよ?」 赤面して首を振る妹に、セインは物凄く複雑そうな表情を浮かべ、 「……助けるんじゃなかったかな」 チッ、と舌打ちまでする始末だ。 「セイン、何かサラリと酷いこと言わなかった?」 「気のせいじゃない? 私は何も言ってないよ。うん、言ってない言ってない」 笑い合うだけの気力は、二人ともまだ残っていた。 「私は待つよ。もう一度会おうって、約束したし」 信じられるだけの信頼を、セインはゼロに寄せているから。 私はずっと、母親を求めてきた。 生まれて目覚めたその時から、母親という存在だけを、欲していた。 名前以外はほとんど思い出せない曖昧な記憶、それでも自分が人であるなら、必ず 母親がどこかいるのだと、私は思い込んでいた。 「けど、スカリエッティと再会したとき、私は全てを思い出し、悟った」 自分が、普通の人間ではないことを。聖王のゆりかごを起動し、動かすためだけに作ら れた、器に過ぎなかったことを。 遺伝子系譜を辿っていけば、自分の元となった人間はわかるだろう。 しかし、それは決して私の……ヴィヴィオの母親ではない。 「私に母親はいない、いるはずがなかったんだ」 自分は兵器だ。聖王という名の、史上最強の兵器。 玉座を守り、ゆりかごを動かすためだけに作られた、ただの鍵。 「人としても、聖王としても、私は中途半端……」 ならばどちらか一つでも、完全なものとしたい。 聖王が、その絶大なる魔力を解放させていく。 「私が母親を求めていたのは、私が弱かったからだ」 力のない子供の姿、庇護されなければ、守られなければ生きていない無力さ。 「けど、私は強くなった」 誰よりも強く、何よりも強く、どんなものよりも強く―― 最強の存在である聖王として、ヴィヴィオは覚醒した。 「だから、もういらない」 母親なんて、必要ない。 その存在を追い求め、欲していた日々は、終わったのだから。 「最強の聖王に、そんなものはいらない!」 虹色の魔力が爆発し、眼前の敵に強烈な衝撃波が叩き付けられる。 ゼロは衝撃波を浴びながら、倒れそうになる身体を必死で耐え抜いた。 「言いたいことはそれだけか……強くなった、か」 聖王の強さをものともせず、ゼロはヴィヴィオに剣を向けていた。最強を前に臆するこ ともなく、瞳には強い光があった。 何故こいつは、跪かない。 「ここをお前の処刑場にしてやる。私の前に、倒されろ!」 聖王が、自ら攻撃を仕掛けにいった。凄まじい速さでゼロとの距離を詰める。 激しい虹色の光りが、辺りに飛び散った。 「ハァッ!」 ゼットセイバーの斬撃が、迫り来る聖王へ振り下ろされる。避けることも出来たが、聖 王は敢えて避けることをしなかった。 「プラズマアーム」 光りが、聖王の両腕を包んだ。ゼットセイバーが直撃するも、輝きが斬撃を防いでいる。 ゼロは刃を引き、連撃を叩き込んだ。 「こんな斬撃!」 斬撃と打撃の応酬で、聖王はゼロにも劣らぬ速さを見せた。威力も、一発で相手を叩き のめすだけの力が籠もっている。ゼットセイバーでなければ、刀身を砕かれていただろう。 連続斬りを全て受けきり、聖王は反撃に転じた。 「プラズマ――」 左腕に魔力が集中され、雷撃が巻き起こる。 これは、先ほどと同じ……! 「スマッシャァァァァッ」 砲撃を、ゼロはギリギリのところで避けた。それでも砲撃の余波だけで、身体が吹き飛 ばされそうになるほど、聖王の一撃は強烈だった。 後退し、ゼロはバスターショットの連射を浴びせかける。 「無駄だ」 避けることも、防ぐことも、この程度の攻撃には必要なかった。バスターショットは聖 王の鎧に尽く弾かれ、虚しく散っていく。続けざまにフルチャージショットが放たれるも、 聖王はそれを無視した。直撃弾でさえ、無力化してしまったのだ。 「チッ――」 イノーメスカノンでさえ通用しない相手に、フルチャージショットなど攻撃にもならな いということは判っていた。 だが、牽制にすらならないのでは、舌打ちの一つでもしたくなるところだった。 「セイクリッドクラスター」 拡散型の魔力弾を、再び聖王は撃ち放った。数は三つ、ゼロの中空で炸裂し、魔力弾の 雨を降らせた。 浴びせかけられた雨粒の威力は、その小ささとは比較にならないほどで、ゼロは全身が 貫かれるような痛みを味わった。 「どうだ、痛いだろう」 聖王は事実を確認するかのように、ゼロに声を掛けた。あれだけの魔力弾を浴びても、 彼はまだ立っている。 膝すら、付いていないのだ。 「……どうして」 何故、倒れないんだ。 ゼロの全身が輝き、ゼットセイバーを両手で握り直す。まだ、攻撃を続けるというのか。 「その技は、もう憶えた!」 繰り出されるチャージ斬りの斬撃を、聖王は片手で受け止めた。 聖王に、二度同じ技は通用しない。 「お前の必殺は、聖王には効かない」 斬撃を弾かれ、ゼロは大きく身体を後退させた。聖王はそれを追わず、右手と左手、そ れぞれに魔力を集中させはじめた。 片腕ずつ、異なる魔法を使おうとしているのだ。 「ディバインバスターと、プラズマスマッシャーだ」 技の名に、ゼロは覚えがあった。 「それは、フェイトの――」 もう片方は、なのはの技だったはずだ。 先ほどから感じていた、些細な疑問、聖王は何故二人の技を使えるのか。 「憶えた……私はあそこで、二人の戦い方を憶えたんだ」 無意識か、それとも本能か、ヴィヴィオは六課で見たなのはとフェイトの戦いを、完全に 記憶していた。戦技教導の映像記録も、実際に新人たちと戦っている姿も、全て魔法の データ収集として記憶されていたのだ。 「私は子供の姿をしながら、私の存在を感知できる魔導師を探していた」 そして、なのはと出会った。管理局が誇るエース・オブ・エースと、出会ってしまった。 その結果ヴィヴィオは、いや、聖王はデータ収集の対象であったなのはも倒せるだけの存 在となったのだ。 「なのはとフェイト、私はその二人の戦い方を学習し、強化している」 聖王の鎧が持つ、超高度学習システム。 謂わばゼロは、なのはとフェイトの二人を相手にしているようなものなのだ。さらに聖 王は、戦いの中で常に学習を続け、進化していく。 「お前の剣技も、憶えた」 チャージ斬りを片手で受け止めるのも、聖王にとっては造作もないことだ。負けるわけ がない、ゼロが、勝てるわけがないのだ。 両手を、聖王は突き出した。 「消し飛べ、そして鉄屑と化せ」 ディバインバスターと、プラズマスマッシャーの双撃砲が発射された。 砲撃は、ゼロに直撃した。 爆光が輝き、爆発が轟く。大広間は既に崩壊寸前に近いダメージを負っており、修復作 業も間に合わない。 聖王はゆりかごの修理に回すエネルギーすら、自身の力に変えているのだ。 「これが私の、聖王ヴィヴィオの強さだ!」 砕け散ったか、それも消し飛んだか。並の魔導師なら千回は殺せるだけの力を叩き付け た。例え生きていても、無事であるはずがない。 爆煙が晴れ、視界を遮るものが消えていく。 聖王は倒した敵を確認しようと一歩前に出て、 「これで勝った気でいるなら、お前はまだ甘い」 声に、足を止めた。 信じられない物を聞いたかのように、煙の晴れた先に視線を向ける。 「倒したと思って近づいたところで、思わぬ反撃に遭うかも知れないぞ?」 ゼロだった。ボロボロになりながらも、ゼロは生きて、その鋭く力強い瞳で聖王を見据 えている。 「なんで……倒れないんだ」 直撃だったはずだ。避けることも出来なければ、防ぐ手立てすら持っていなかった。魔 力砲撃を全身に浴びて、鉄屑と化してもおかしくないはずだ。 手加減など、一切していないのに。 「これが、お前のいう強さか」 傷だらけの身体を引きずるように、ゼロはゆっくりと歩き出す。攻撃は、決して効いて いないわけじゃない。 聖王が、ヴィヴィオが倒し切れていないだけ……そうに決まっている。 「この程度なら、子供の姿の方がまだ強かったな」 あり得ない、何なんだ、こいつは。 「アァァァァァァァァァァァァッ!!!」 魔力光が、聖王の身体から連続して放たれた。 美しい虹色の光りが、爆光となってゼロに襲いかかる。 「倒れろ、死ね、くたばれ!」 そのほとんどは直撃し、直撃しなくても爆風や攻撃の余波によってゼロはダメージを負 っているはずだ。 なのに何故、ゼロは倒れない。どうして、死なないんだ。 「私は強い、私は強い、私は強い、私は強い、私は強い……」 無敵にして、完全になる、最強の存在。 「私は強い、強くなったはずなのにっ!!!」 聖王は叫ぶと、セイクリッドクラスターを叩き付けた。ゼロの目の前で拡散させ、魔力弾 を全身に浴びせかける。 「ぐっ!」 流石のゼロも、衝撃に後退してしまう。 けれど、それでも尚、倒れることだけはしなかった。 「倒れろ、倒れろよ!」 聖王は、如何なる敵に対しても勝利しなければならない。そして聖王と相対するものは、 必ず負けなければいけない。 それなのにこいつは、ゼロは―――! 「お前は、どうしてそこまで出来るんだ……」 何者にも屈することのない聖王が、明らかに怯んでいた。目の前にいる敵に、戦士に、 存在に、僅かに圧倒されたのだ。 「オレには、生きて元いた世界に帰るという目的がある」 それを果たすまでは、死ねないとでもいうのか。しかし、それが戦う理由だというのな ら……! 聖王は、ゼロから発せされる圧倒感を打ち消すように、右手を突き付けた。残された力 を振り絞り身構えるゼロだが、聖王の行動は攻撃を意図したものではなかった。 「次元航行が出来るのは、ゆりかごだけじゃない」 呟くと、ゼロの背後の空間に、突如亀裂が入った。そして、彼の背丈以上の大きさがあ る穴が出来上がっていく。 空間を、次元をこじ開けたとでもいうのか。敵の意図が読めないのか、ゼロは無表情の まま警戒を続ける。 だが、次の瞬間、聖王ヴィヴィオは信じられない言葉を口にした。 「その次元の穴は、お前が元いた世界へと繋がってる」 言葉に、ゼロが驚愕を覚えたのは事実だ。 時空管理局でさえ探し当てることが出来なかった世界へ続く道を、聖王は一瞬で作り上 げたのだ。 「嘘は、付いてない」 信じる信じないは別として、聖王は確かにゼロの元いた世界への道を作った。けど、何 故そのようなことをしたのか? 「何の真似だ……」 後ろを振り返らずに、ゼロは聖王だけを見て、口を開いた。聖王は息をつきながら、攻 撃の構えまで解いてしまった。 「お前の戦う理由が、元いた世界に戻るためなら、その穴を通って帰ればいい」 聖王は、ヴィヴィオはそう断言した。 どのようにでも殺すことの出来る相手に対して、倒さなければいけない敵に対して、聖 王は通常では考えられない行動に出たのだ。 「どういう風の吹き回しだ」 ゼロは、聖王は嘘をついていないと思った。恐らく背後に出来た穴を通れば、自分は間 違いなく元いた世界へと帰ることが出来る。 何故、聖王がそんなことをするのか、それだけが判らない。 「……私は一度」 聖王の表情が、僅かながらに変化した。 幼さを残す面影が、ゼロも知っている幼女の時と重なっていく。 「お前に、助けられた」 少女の想いが、そこにはあった。聖王などという存在ではない、ヴィヴィオという名の 一人の少女が、そこにいた。 かつて聖王病院を彷徨っているとき、ヴィヴィオは騎士に襲われそうになったことがある。 そして、その時彼女を助けたのが―― 「ゼロ、お前だ」 借りは、返さなくてはいけない。 少女としてか、それとも聖王としてか、ヴィヴィオは戦いを一時的に放棄し、ゼロにチ ャンスを与えている。 「元の世界帰って……私の前に二度と現れないで」 誓えば、ヴィヴィオはゼロを殺さないつもりだった。元の世界に帰って彼が自分の前か ら姿を消せば、その存在を忘却し、記憶の彼方に飛ばしてしまおうと思っていた。 「…………」 ゼロは無言だった。思案しているのか、それならそれでいい。数分ぐらいは、考える時 間を与えても―― 「断る」 数秒の間しか置かないで、ゼロは断言した。 「オレは、まだ元の世界に帰るわけにはいかない」 ヴィヴィオの表情が、歪んだ。 「なんで、どうして!」 元の世界に帰るという目的は、果たされようとしている。後ろを振り向き、穴に飛び込 めば、それで済むのだ。 「お前の、あなたの戦う理由はもう――」 「理由なら、ある」 ゼロの声が、ヴィヴィオの叫びをかき消した。 「オレは、オレの戦いに、決着を付ける」 そして初めて、彼は元いた世界に帰ることが出来る。少なくともゼロは、そう考えてい るのだ。 「戦いなんて、そんなもの! 戦って、正義の味方でも気取りたいの? 聖王に勝って、 英雄にでもなるの!?」 ゼロが自分に勝つことなど、出来はずがない。そして自分がゼロに負けることも、ある わけがないのだ。 ヴィヴィオの叫びに、ゼロは静かに口を開く。 「虚構や虚像に、意味なんてない。オレは、正義の味方でもなければ、英雄になりたいな んて思ったことは、一度もない」 英雄は、自分がなるものではない。英雄とは、彼の知っている英雄は―― 「オレはただ、自分が信じる者のために戦ってきた」 ゼロの瞳が、ヴィヴィオの人を貫くように見つめている。ヴィヴィオは、顔を背けるこ とも、言葉を発することも出来なかった。 「ヴィヴィオ、お前は何を信じる? 何を信じて、お前は戦う」 問いかけに対する答えは、すぐに見つからなかった。 やがて絞り出すように、ヴィヴィオは言葉を吐き出した。 「私は、私を信じる。聖王ヴィヴィオは、王としての強さのみを信じ、戦う!」 その答えが正しいのかどうか、言った本人ですら判らなかった。 ゼロは、ヴィヴィオの出した答えに、一瞬だけ目を閉じ、 「お前が聖王として持てる強さを、全てオレにぶつけてみろ」 出なければ、オレは絶対に倒せない。 ゼロの言葉に、ヴィヴィオは唖然とした。これではまるで、こちらが挑んでいるようで はないか。 王が、誰にも屈することのない聖王が、一人の敵に対して戦いを挑んでいる。そんなこ と、あっていいはずがない。 「良いだろう――」 しかし、ヴィヴィオは、ヴィヴィオから聖王へと表情を戻した少女は、覚悟を決めてい た。王の威厳も、権威も、神聖すらも、この際はどうでもいい。 ただ目の前にいる敵を、最強の戦士を、全力で倒したい。 「私はお前を倒して、完全な聖王となる」 その為に得た、聖王の力。最強にして最大、絶対にして無敵、私はそれだけの強さを、 聖王となって手に入れたはずだ。 「この剣で、お前を倒す!」 聖王が右手をかざすと、魔力粒子が結集し、形を為していく。 黒色の柄を持つ姿形に、ゼロは見覚えがあった。大きさに際はあるが、あれはまさか…… 「ライオットブレード!」 フェイトが持つそれと、全く同じ物を聖王は作り上げた。ゆりかご内で起こった戦闘全 てが、データとして聖王の元へ送られてくるのだ。 「ゆりかご内で、私に出来ないことはない」 剣に、魔力の刃が光り輝く。フェイトのそれと違って、虹色の光りを放つ刃が、刀身と して現れる。 「お前は私を本気にさせた。これでお前を――」 言いかけて、聖王の動きが止まった。 ライオットブレードを持った片手に、視線を向けた。 「なに、これ」 聖王は、ライオットブレードを正確に再現していた。流石にインテリジェントデバイス ではないが、材質、形状、出力、あらゆる物をコピーし、完全な物として作り上げたのだ。 「重い」 片手に持った剣が、重い。刃の出力も、聖王が予想していた物より遥に強い。何という 凄まじい武器……いや、待て、フェイトはこの重たい剣をどのように使っていた? 「二刀流――」 そう、フェイトは二刀のライオットブレードを両手に持って、戦っていたのだ。こんな にも重く、高出力の剣を、二刀も振り回していたというのか。 聖王が、唇を強く噛みしめた。 「一太刀で、決めてやる」 両腕で、ライオットブレードをしっかりと構えた。 対するゼロは、動く気力すら残っていないのか、ゼットセイバーを構える気配すらなか った。 「動けないなら、それでもいい」 私は、勝たなくてはいけない。聖王として、聖王ヴィヴィオとして、どんな敵も倒して、 「強さの証を、知らしめなければならいんだ!」 聖王ヴィヴィオが、駆けた。 虹色の閃光が、ゼロとの距離を一瞬で征服し、輝ける刃を振りかざす。 「死ねぇぇぇぇぇぇっ!!!」 振りかざされた剣と刃が、ゼロの脳天に直撃した。衝撃が身体を揺らし、斬撃がゼロの 赤いヘルメットを、叩き斬った。 「私の、勝ちだっ!」 今度こそ、倒した。勝利を確信しても、いいはずだ。 勝ち誇った表情を作ろうとした聖王、その聖王に対し、 「―――――!?」 鋭い眼光が、貫いた。 ゼロの瞳は、まだ死んでいない。力強い光りを放ち、生きている! 「そん、なっ」 ほとんど反射的に、聖王は後方に飛んで距離を取っていた。ゼロの瞳と目があったとき、 聖王は確かにその眼光に貫かれた。本能的な恐怖が、聖王の身体を支配したのだ。 「はぁっ……はぁっ……」 ゼロは、倒される寸前だった。反撃する力も、戦いを続けるだけの体力も、抗うだけの 気力も、何も残されていないはずだ。 荒い息を吐き続けながら、ゼロの身体がぐらついた。割れたヘルメットが落ちて、片方 は床へ、もう片方は次元の穴へと吸い込まれていった。聖王の言が本当であれば、今頃 元いた世界のどこかに飛ばされたのだろう。 警戒し、次なる攻撃を仕掛けてこない聖王であるが、ゼロはもう動けなかった。例え動 けたとしても、聖王に、ヴィヴィオに勝つことはもう…… ――ゼロ、光をつかむんだ その声は、突然ゼロの頭の中に響き渡ってきた。 力尽き、倒れようとするゼロを押しとどめるように、親友にして戦友の、彼が唯一英雄 と認めた男の声が、聞こえてきた。 「エックス、なのか……?」 消え失せようとしている意識を無理矢理覚醒させ、ゼロは何とか踏みとどまった。 ――光が、君を導いてくれる それは、ゼロがミッドチルダへ来る前、最後に聴いたエックスの声と、言葉だった。 「光を、つかむ」 ゼロは、何もない空間に手を伸ばした。視線の先にあるのは、割れたヘルメットの片 割れだけ。 光など、どこにもあるわけが…… 「いや、ある」 ゼロの足下が光り輝いていく。その光りは聖王ヴィヴィオにも見えるようで、驚きに 目を見開いている。 この光りは、いつか見たことがある。この世界に来る前、確かにオレはこの光りを見た。 ゼロは足下に転がるヘルメットの割れた額から、一つの石を取り出した。 「願いの叶う石、か」 宝石、ジュエルシードをゼロは右手で握りしめた。 あふれ出す光りが、ゼロの全身を照らし、輝かせる。 「答えろ、ヴィヴィオ」 静かな口調で、ゼロは言葉を紡ぎ出していく。 「お前の言う強さとはなんだ」 言葉に、聖王が一歩、また一歩と後ずさる。聖王が、気圧されている。 「お前を愛してくれた人を傷つけ、お前が愛した人を傷つけて」 遠くでは、なのはを必死で治療しているアギトが、ゼロの姿を見守っている。 「お前はそんな力が欲しかったのか? こんな、オレのヘルメットしか割れないような、 その程度の強さを」 お前は欲しかったのか? 「違うだろう、ヴィヴィオ」 ジュエルシードの光りが、ゼロの全身を包み、燦めきと輝きを放っていた。 聖王がその問いに答えを出すよりも早く、ゼロが駆け、飛んだ。 「違うだろ―――――――――ッ!!!」 ゼロが空中で、右腕を振り上げた。ジュエルシードを握りしめた、願いを叶える石を 持った右手に、力を込めた。 聖王ヴィヴィオは、涙を浮かべていた。答えることの出来なかった自分にか、最強の 敵を前にした恐怖からか、それでも聖王は、攻撃の構えを取った。 「インパクトキャノン!!!」 聖王ヴィヴィオが持つ、最強の技。拳を使った、最大威力射撃。 如何なる物も消滅させる、王者の一撃。 対するゼロも、右の拳を振り上げていた。 ジュエルシードの輝きは、ゼロが永い眠りと共に失っていた記憶の糸をたぐり寄せる。 ゼロは、その光りをつかむことに成功した。 「アースクラッシュ!!!」 ゼロが記憶と共に過去に捨て去った技。持てる全ての力を拳に集め、全力で敵に叩き 込む、破壊の一撃。 アースクラッシュと、インパクトキャノンが激突した。 最強の技と技がぶつかり合い、二つの光が輝く。 赤と、虹。 赤き閃光の前に、虹色の光りが押しつぶされようとしている。 「私は……私はっ!!!」 聖王ヴィヴィオは、持てる力全てを出し切った。誰であろうと、彼女がこの時、本気 でなかった、実力を発揮できなかったとは言えないだろう。 そして、全てを出し切ったからこそ、 「これがっ――」 アースクラッシュが、インパクトキャノンを打ち破った。叩き込まれた破壊的エネル ギーの塊が聖王の鎧を揺るがし、レリックコアに亀裂を走らせた。 「答えだっ!!!」 ゼロが振り上げた最後の一撃、ゼットセイバーの斬撃が、レリックコアを斬り裂いた。 アースクラッシュで受けたダメージに加え、致命的だった。 聖王の鎧が砕けた。絶対不可侵の神聖が、破られたのだ。 「あっ、あっ…………」 聖王の鎧が、レリックが砕けた瞬間、ヴィヴィオの身体に劇的な変化が起こり始めた。 進みすぎた時計の針を戻すように、時の流れの逆流が、ヴィヴィオの姿をゼロのよく知 る姿へと戻していった。 「いやっ、こんな」 急激な変化を止める力を、ヴィヴィオは持っていなかった。聖王の鎧を失った時点で、 彼女はゆりかごから魔力を得ることが出来なくなり、砕け散ったレリックも、彼女に力 を与えてはくれなかった。 纏っていた黒衣が消え、ボロ布へと変わる。身長をはじめとした体格、骨格、あらゆ るものが元の幼女の姿に近づきつつあった。 「こんなの、やだ…………」 ヴィヴィオは震えていた。聖王でいられなくなる、無力な子供へと戻ってしまうこと が、怖いのか。 「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――――――っ!!!」 発狂寸前となったヴィヴィオが泣き叫んだとき、彼女の姿は完全に戻っていた。聖王 ではない、幼女としての、自分自身に。 強くなった、つもりだった。聖王となって、誰にも屈することのない最強の力を手に 入れたんだと、思い込んでいた。 でも、それは大きな間違いだった。聖王の強さは自分以外の全てを屈服させるための 強さなのだ。何者にも屈しない強さ、それを本当に持っていたのは―― 「目が覚めたようだな」 発せられた言葉に、ヴィヴィオは顔を上げることが出来なかった。 「ゼロ…私、なのはを……なのはママをっ!」 例え聖王でなくなっても、ヴィヴィオの記憶が消えるわけではない。彼女は元の姿に 戻って初めて、自分が何をしてしまったのかを理解したのだ。 真実と現実、そして自分の存在理由。これを受け入れることの出来なかったヴィヴィ オ、全てに絶望し、暴走した挙げ句、彼女は力を求めた。弱い自分を隠すため、弱い自 分を捨てるため、ヴィヴィオは聖王という存在になろうとした。最強の力に縋り付き、 変わろうとしたのだ。 そうした果てに、ヴィヴィオは力を手に入れた。 誰にも負けない最強の聖王ヴィヴィオとなった彼女がはじめにしたことは、かつての 自分が愛し、自分のことを愛してくれた人々への、反抗だった。 憧れと愛しさ、そして強さの象徴を、ヴィヴィオは自らの手で破壊したのだ。 だからヴィヴィオは、ひたすらに泣き叫んだ。何の力もない無力な彼女は、強さを持 たない弱い彼女は、もう泣くことぐらいしかできなかった。 そんなヴィヴィオの姿を見ていたゼロが、静かに口を開いた。 「お前はもう、泣かないだけの強さを持っているはずだ、ヴィヴィオ」 言葉に、ヴィヴィオが顔を上げた。 そして、いつか、なのはの言った言葉が、思い起こされる。 ――泣いちゃダメだよ。倒れたときの涙は、弱さの証だ。ヴィヴィオは、強くならなくちゃね ゼロの言うとおりだ、自分は今でも弱いけど、昔よりは強くなった。なのはやゼロが、 それを教え、与えてくれたんだ。 だから、ヴィヴィオは必死で瞼を擦り、涙を拭った。 「うん……もう泣かない、泣かないからっ!」 ほとんど無理矢理作ったであろう笑顔と微笑み。しかし、ゼロはそんなヴィヴィオの 笑顔に、確かな強さを感じ取った。 聖王ヴィヴィオは、ゼロによって倒された。 復活したゆりかごは、玉座にあるべき王を失った。これが何を意味するのか、いよい よ事態は最終局面を迎えようとしている。 つづく 前へ 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/2463.html
――――空の向こうに何かあるって考えたことはある? 無。 まったく何も無い。 音も、光も、重力も。 暗闇の中、"其れ"は巨大な惑星に引き寄せられていく。 ――自由落下という奴だ。 大気圏外から地表めがけて、何千キロもの距離を一直線に。 まず最初に訪れたのは熱であり、続いて衝撃。 分厚い空気の層に叩きつけられた"其れ"は、摩擦による途方も無い熱量に耐えながら、 一挙に回復した重力によって、瞬く間に大地との距離を縮めていた。 "其れ"は、岩ではなかった。 震動に揺さぶられ、表面を焦がし、時折何かの破片を剥離させながら、 只管に突き進む"其れ"は、何らかの知的生物によって作り出された――――人工物であった。 無論、大昔から軌道上に存在している、数多の漂流物の一つが、 惑星の引力に導かれて降下してきたのだ、などという可能性もある。 しかし、明らかに"其れ"は未だ機能を喪ってはいなかった。 数回、装甲と思わしき部位が剥がれ落ちると、即座に落下傘が開いたのだ。 無論、この圧倒的な摩擦熱の前では、瞬く間に燃え尽きてしまうのだが、 "其れ"は、落下傘を代償にして姿勢を安定させる事に成功する。 そして――――文字通りの流星と化して、"其れ"はミッドチルダの大地に落着した。 ******************************************** 「これが二日前の話。レリック――と断定はできないけれど。 それに類似する存在が、クラナガン北西に落着した」 「……そういや、昨日のニュースで見た気がするわ。 流れ星が落ちてきた、って随分と騒いどったなぁ」 「ええ。今朝の段階では、こんな物体だなんて私も知らなかった。 まさか軌道上の衛星に動画が残っているなんて思わなかったから。 私も事態を把握したのは、昨日だったの」 薄暗い室内――――聖王教会の一室。 カーテンによって完全に光を遮断された其処では、 二人の女性がモニターに向かって視線を送っていた。 外宇宙から飛来した何らかの人工物が、 大気圏へと突入し、燃え上がりながら――…… しかし形状を保ったまま、大地へと到達する映像。 それを注視している一人は、騎士カリム・グラシア。 そしてもう一人。 八神はやて。正式名称、古代遺物管理部機動六課―― 即ち、通称を「六課」とする新設部隊の指揮官を務める人物である。 そのはやての言葉に頷き、カリムは空中に投影されたキーボードへと指を走らせる。 繊細な指捌き、深刻な顔つきとは対照的な、軽快な電子音が数度響き、 続いてモニターに映っていた画像が切り替わった。 「そして問題が、これ。今日の本題」 「ん――? これ、大型次元航行船やないか……ッ」 ええ、と頷くカリム。驚愕するはやて。 無理も無い話である。 それは異形の大型船舶であった。 次元航行船――或いは単に宇宙船とでも呼ぶべき巨大な影が、 ミッドチルダの衛星軌道上に数隻浮かんでいるのである。 「管理局にこんな型の船はない筈やし……船籍は?」 「不明。 通信を送る間も無く、船舶はすぐに姿を消したから。 未確認の世界からという可能性もあるし、或いは広域次元犯罪の可能性もある。 でも一番の可能性は――――」 「落着物……レリック絡み、やな」 「ええ。本局へはまだ正式報告はしていないわ。 一応、クロノ提督には連絡して、軌道上の警備を厳重にして貰っている。 でも――はやてには話しておこうと思って。 そして、これをどう判断するか。どう行動すべきか。 慎重に行動しないと――失敗するわけにはいかないもの」 「…………………」 その通りだ。慎重にならざるを得ない。 レリック事件も。その後に起こる事件も。 対処を一つ間違えれば、どんな災厄が起きるかわからないのだから。 だが――だからと言って、後手後手に回ってはならない。 慎重に行動した結果 『間に合いませんでした』では駄目なのだ。 ならば。 「だったら、すぐに調査してみんと。 うちらに任せてくれるか、カリム?」 そう、ならば。 機動六課――自分達の出番だ。 そう言って、はやては頷いた。 キーボードを叩き、暗幕を取り払う。 眩いばかりの陽光が室内を明るく照らし出した。 ――このように、暗い状況でも打破できる部隊。 それが機動六課なのだと、言わんばかりに。 「何があっても、きっと大丈夫。 即戦力の隊長達は勿論。新人達も実戦に対応可能。 予想外の事態にも、ちゃんと対応できる下地はできてる。 だから――絶対に、大丈夫や」 かくして、機動六課に初めて、アラートが響き渡る。 ヘリで現場――山間の落着物へと向かった六課の面々は、 空中型ガジェットと遭遇し、これを迎撃する方針を固めた。 隊長陣にして空中戦力であるスターズ1、ライトニング1が迎え撃ち、 それに平行して、残存兵力が地上落着物の警備を担当。 ――――――何の問題も無かったのだ。 少なくとも、その時までは。 ********************************* 《スターズ1、ライトニング1、エンゲージ!》 《スターズ1、ヘッドオン! シュート……ナイスキル!》 《続けてスターズ1、アクセルシュート》 《ライトニング1、ハーケンモード! 2キル!》 「…………ふぇー。なのはさん達、凄いなぁ。 うわ! 見て見てティア! あの反転機動! 上に昇りながらひっくり返って向き変えてる!」 「スバルうっさい。 無駄口叩いてる暇があるなら、ちゃんと周り見てなさい。 この落着物を取られたら、アタシ達の負けなのよ」 「だぁいじょうぶだって。ティアは心配性なんだからー」 通信機から聞こえる管制官達の報告を聞きながら、 二人の少女が、光点の明滅する空を見上げていた。 スバル・ナカジマ。ティアナ・ランスター。 真新しい白色のバリアジャケットに身を包んだ彼女達は、 スターズ3、スターズ4――つまり、機動六課の新人フォワードである。 度重なる訓練を重ねて、ようやくの初任務。 新型の装備に、新しいバリアジャケットも相俟って、 地上に降り立ったばかりの彼女達は、興奮と緊張の最中にあった。 ――――が。 それも自分達の担当する場所が「安全」だとわかるまでの話だ。 勿論、ガジェットが地上を襲撃する可能性はある。 ……あるのだが、しかし空中で簡単に蹴散らされているのを見ながら、 こうして手持ち無沙汰に落着物の護衛をしていると、 そのような高揚した感覚は、あっという間に冷めていった。 つまりは平常心、いつも通りという事だ。 ある意味では理想的な状態とも言えるが……。 しかしティアナにしてみれば、初任務としては少々、不本意だといわざるを得ない。 焦りにも似た感情。最も、それに突き動かされるほどの衝動では無いのだが。 「それにしても……」 そういった自分の心情を落ち着かせるべく――意識しているかどうかはともかく―― 彼女は、自分達の護衛対象である落着物へと視線を向けた。 「……何なのかしらね、これ」 「うーん……まあ、お星様には、見えないよねぇ」 数十メートルに渡るなぎ倒された木々と、抉られた大地の先に、"其れ"はあった。 巨大な金属の塊、とでも表現すれば良いのだろうか。 半ば以上は地面にめり込んでいるそれは、入り口らしい開口部を此方に向けて鎮座している。 地面に埋まっている部分もそう大きくは無いが、 それでも六課の有するヘリコプター程の大きさはあるように思えた。 だが、用途がわからない。 こうして形状をほぼ完全に留めたままという事は、かなり頑丈に作られているのだろうが。 「……わかるのは、なのはさん達の戦闘が終わって専門家が来てから、か」 「でもさ、結構ミッドチルダ風じゃないかな、あれ。 レリックって言うから、もうちょっと古臭いの想像してたんだけど」 「見た目に惑わされないの。綺麗な宝石みたいなのだってあるん、だ、か………」 「ん? ティア、どうしたの?」 そう言いながら落着物から視線を外したティアの表情が、一転して硬く険しいものになる。 それにつられて、彼女と同じ方向へとスバルも眼を向ける。 ――そして、それを認識した。 それが第一の『想定外』。 巨大な影が、空間からにじみ出るようにして現れる。 それは船だった。 無論、ただの船である訳がない。 戦闘目的に建造された船だった。 堅牢に作られた装甲。巨大な推進器。 そして、それに取り付けられていた銃口は、明らかに此方に向いていた。 ―――敵だ。 「――――ッ! スバル、戦闘準備! こちらスターズ4! 緊急通信―――敵の増援です!」 ――――本当、とんだ初任務になりそうだ。 身体の内から湧き上がってくる高揚感を覚えながら、 突如として空中に出現した船を相手取り、ティアナはその手に銃を握り締めた。 *********************************************** それに前後する事、数分前。 ライトニング分隊――即ちエリオ・モンディアルとキャロ・ル・ルシエ、 そしてフリードリヒの二人と一匹は、レリックと推定される落着物、その内部にいた。 年若く、経験も不足しているとはいえ、それでも立派な管理局員である彼らは、 物珍しさに周囲を見回しながらも、生真面目な表情で警備、調査に当たっている。 少なくともその点においては、良くも悪くも、スターズよりは緊張感があるといえた。 或いは、落着物内部の雰囲気に呑まれてしまったのかもしれない。 特段、何か危険な物体があった、というわけではない。 其処にあったのは、一つの巨大な――透明のケースだった。 今まで黙って其れを眺めていたエリオは、搾り出すようにして口にする。 「――――まるで、お墓みたいだ」 完全な静寂に支配された暗室。 その最奥に安置されている棺の中には、一人の人物が眠っていた。 緑色の鎧兜、甲冑を纏って横たわる彼は、まるで古の英雄のよう。 むしろ荘厳ささえ感じさせる光景は、まさしく墓の其れだった。 となると、周囲に置かれた大小さまざまなコンテナは、 英雄の為の副葬品といえるのかもしれない。 いずれにせよ、尊い光景に思えた。 尊く、寂しく、そして穏やかな風景。 となると、僕達はこの人を――この人のお墓を守ってるのかな。 そんな思いを抱いたエリオは苦笑を浮かべて首を左右に振る。 ――――と、不意にキャロ、フリードが棺の更に奥へ視線を向けているのに気がついた。 「……どうか、したの?」 「え、あ、いえっ。何でもないんです、ただ――……」 「ただ?」 「……誰かに、見られているような気がして……」 その言葉に従い、エリオもまた棺の向こう側へと眼を向ける。 勿論――誰もいない。いる筈がない。 ここにいるのは自分達と、あの棺の中の戦士だけなのだから。 「――大丈夫だよ、誰もいない」 「そう……ですよね。ごめんなさい、私、ちょっと緊張しちゃって――」 無理もない、と思う。 自分だってそうなのだし、それなら彼女だってそうだ。 だからエリオは少しだけ照れ臭そうな様子で、笑いかけた。 「うん、僕も、そうだから。――だから、その。大丈夫だよ」 「――――うん」 その言葉にキャロが返事をした直後であった。 アラート。新たな敵の出現を察知したティアナからの全員通信。 それを聞いた二人は、互いの手を握り締め、落着物から外へと飛び出していく。 ――其の背中を、カメラアイが見つめていた事にも気付かずに。 ***************************************** 船はどうやら、恐らくは降下艇であるらしかった。 地面に降り立つと同時に展開されたタラップからは、 二十体近くの敵増援が姿を現した――――が。 予想外の事態が一つ。 「な、なにあれ……」 「ガジェットじゃ――無い?」 そう、ガジェットではなかった。 それは人間の胸ほどの身長の、小柄な異形の兵士達が二十名。 そして――3mはあるだろう、巨大な兵士が一人。 どれもが不気味な装甲を纏っており、手には奇妙な武器を携えている。 誰もが初めて見る、そして初めて知った相手だった。 別段、フォワード陣だけではない。 その背後に控えるロングアーチにとっても、だ。 エイリアン(異星人)。或いはインヴェーダー(侵略者)。 次元管理局の、決して短いとはいえない歴史を紐解いても、 非人類型の存在と接触した例は皆無である。 即ち、これはどういう事なのか。 ―――――――ファーストコンタクト。 まったく、冗談じゃない。とんだ初任務だ。 そんな言葉が思い浮かび、ティアナは頭を振って思考を追い払う。 目の前で武器らしき物を構えている存在がいるというのに。 「…………ッ! 迷ってる暇は無い、か。 スバル、クロスシフトA! エリオはスバルと一緒に敵を霍乱! キャロは――エリオをブーストした後、チビ竜で攻撃!」 「わかった!」 「了解!」 「了解しました!」 それぞれの応答があり、六課フォワード陣が動き出す。 「いっくぞぉーっ!」 まずスバルが両腕を打ち合わせ、マッハキャリバーの速力によって突貫。 シールドとバリアジャケット、そしてあのスピードは、フロントアタッカーとして最適だ。 「我が乞うは、疾風の翼――――」 ついで、キャロの詠唱が始まる。 支援魔法。および竜使役による火力。 まったく、将来が恐ろしいったらありゃしない。 「……一気に行くよ、ストラーダ」 《OK!》 ブーストによって速力が上昇すれば、多少防御力が低いとはいえ、 エリオも十二分に前線で戦うことができる。 何せ彼の速度は、少なくとも新人フォワードの中では最速なのだから! 「よし、クロスファイア―――………」 そして自分――ティアナだ。 カートリッジをロードし、魔力を補充。 銃身に集中させ、一気に解き放つための準備をする。 あの数だ。まともに撃っていては話にならない。 こうして、機動六課フォワード陣は攻撃の準備を始めていた。 スバル、エリオが突貫し、敵歩兵を霍乱した後、 ティアナとキャロの一斉射撃で、殲滅する。 作戦としてはシンプルだ。 これが通常のガジェット戦であれば、容易に成功しただろう。 だが、ある意味では当然の話だが。 どんな魔導師が接近するのよりも。 どんな魔導師が呪文を唱えるよりも。 ―――狙いをつけてトリガーを弾くのは、早いのだ。 鋭い発射音が連続して響き渡り、緑色の光弾が一挙に発射される。 大気を焼く、科学的な臭い。それが鼻に届くよりも先に飛来する雷光。 それに最初に対応したのはスバルであった。 勿論、フロントアタッカーの彼女は慌てない。 今まで経験してきた――主になのはやヴィータの――弾幕よりも、 圧倒的に濃い攻撃の嵐の中にあっても、 その右腕に展開したシールドとバリアジャケットがあれば、大丈夫。 大丈夫。大丈夫なはずだった。 ただ――そう、ここで第二の『想定外』が発生する。 「――――へ?」 バリンという軽い音と共に、シールドが弾けて消えた。 その事実を認識するよりも先に、更に続けて飛んできた光弾が、 彼女の左肩を撃ち据える。 バランスを崩した主の身体を、マッハキャリバーの車輪が必死で支え、 転倒する事無く、速力を維持したまま、体勢を立て直す。 「う、うわわわわわわわわわッ!!」 痛みを堪えながら急速旋回。マッハキャリバーを駆使して、敵の集団から距離を取る。 何かの焦げる――嫌な臭い。スバルはちらりと発生源に眼を向ける。 新品だったはずのバリアジャケット、その左肩が無残にも焼け落ちていた。 ――もしもバリアジャケットが無かったら。 その事を考えると、鳥肌が立つ。 だが――それ以前に、重要な事があった。 「ティア! シールドが通じない!!」 だが、その叫びは既に遅い。 統率された兵士達の弾幕は、互いの装填を補うことにより、ほぼ絶え間なく続く。 無防備に呪文を唱えていた――それを兵士達が認識していたかは別だが――キャロ。 ブーストがかかるのを待っていたエリオ。 そして銃を構えたまま突っ立っていたティアナにも、光弾は、容赦なく襲い掛かっていたのだ。 「――――ッ! 遮蔽を……ッ!!」 撃ち返すよりも先に、ティアナの身体は回避を行っていた。 飛ぶようにして弾幕から身を避けて、背後にあった遮蔽物――落着物に身を隠す。 見れば向こうではエリオがキャロを庇いつつ、同様の場所で遮蔽を取っており、 そして、向こうから走ってきたスバルが隣へと転がり込んできた。 「スバル、キャロ、エリオ、チビ竜! 怪我は!?」 「あたしは無事だよーッ」 「わたしも……な、なんとか……ッ!」 「僕は――ハイ、大丈夫です!」 みんなの声が震えてる。 当然だ。きっと自分の声でさえ震えている。 詠唱が間に合わない。呪文が発動できない。 シールド、バリアジャケットが意味を為さない。 ただでさえ初めての実戦だというのに、あまりにも状況が異質すぎた。 勿論、だからと言って容赦してくれる筈もない。 ちらりと遮蔽物から眼を出し、様子を伺う――ーと、 今まで弾幕を小人兵士を任せていた巨人兵士が、その右手を構えるのが見えた。 その先端には、他の光弾と比べるとあまりにも凶悪な灯りがついている。 ――――アレはマズイ! 「みんな、伏せてッ!!」 言葉が早かったか、或いは砲撃の方が早かったのか。 凄まじい衝撃と轟音が遮蔽物を揺さぶり、土砂が周囲に舞い上がる。 砕けた地面の破片がフォワード達にも降り注ぐ。 ――ティアナは、自分の歯が鳴っている事に気がついた。 敵の攻撃は非殺傷ではない。ある筈が無い。 実戦。負傷どころか、死の危険性さえ伴った実戦。 機動六課に来る前、災害救助で危険な場所に赴いたことはある。 森林警備だって、それなりの危険は伴っていた。 スバルは死が間近に迫ったことさえある。 だが――悪意を持った何者かの、殺意を持った攻撃。 それに晒された事は――フォワード陣の誰もが、初めてだった。 歯を食い縛る。 死にたくは無い。怪我もしたくない。 死なせたく無い。怪我をさせたくない。 なら、前線で指揮を飛ばすセンターガードがしっかりしなければ。 パン、と軽く自分の頬を叩いて気合を入れる。 大丈夫。大丈夫だ。ランスターの弾丸は狙いを外さない。 「スバル、エリオ! 援護するから――できる限りで良いから、敵の弾幕を凌いで! キャロ、ブーストは良いから、攻撃に集中して。 クロスミラージュと、チビ竜の火球で…………。 ――あのデカブツさえ叩けば、何とかなる……からッ」 そう叫び、ティアナは銃を突き出して射撃を開始する。 放っておくとガチガチと鳴りそうな歯を食い縛り、 震えそうな足を踏ん張って、腕を突き出して必死にトリガーを引く。 勿論、それに答えないわけにはいかない。 怖い。どうしようもなく怖かったが――スバルとエリオもまた、遮蔽物から飛び出す。 勿論、防御をしても仕方ないのは理解しているから、回避を優先して。 そしてあの巨人兵士の攻撃する様子が見えたら、即座に遮蔽物へと引っ込むのだが。 唯一の幸いは、敵にも同様に攻撃が通じるという事であった。 どういうわけか、光弾がバリアジャケットや、此方のシールドを貫通するのと同様に、 此方の魔法による攻撃も、相手のフィールドタイプらしい防御を貫くのである。 勿論、スバルやエリオが接近して攻撃できる程の余裕は無いが、 弾幕の合間を縫って発射されるティアナ、キャロ――フリードの火球は、 辛うじて、数名の歩兵から戦闘能力を奪い、迎え撃つことには成功していた。 だが――本命である筈のデカブツ、巨大な兵士にはまるで通じない。 全身に纏った強固な鎧が、その悉くを弾いてしまうのだ。 更に言えば、彼女達の魔法に対し、敵の弾幕はあまりにも量、速度ともに多すぎる。 此方が一発撃つ間に、無効が十発近く弾丸を撃ち込んでくるのでは、まったくのジリ貧だ。 そればかりか、時折発射される巨人兵士の砲撃が、遮蔽物を揺さぶり、精神を痛めつけていく。 ――――初陣にしては、あまりにも絶望的な状況であった。 ******************************************** その光景をモニター越しに眺めていたロングアーチおよび八神はやては、 あまりにも絶望的な状況に対し、自分達がルーキーを死地においやった事を理解する。 脳裏に浮かぶのは、あの軌道上に出現した戦艦だ。 (奴ら、いなくなったんやのうて――文字通り、姿を消してたんや! それで、密かにミッドチルダに降りてきた……あの落着物を狙って!) 勿論、今更気付いたところでどうしようもない。 戦場に『もしも』などと言った言葉は存在しないのだ。 そんな事に時間を費やすくらいならば、何でも良いから行動しろ。 後になってから正解を思いつくより、余程建設的だ。 「――せやったな、ナカジマ三佐」 かつての恩師の言葉を思い返す。 そうだとも、ここで彼女達、将来有望なルーキー、自分の部下を傷つけるわけにはいかない。 その為にはどうするべきか――少なくとも機動六課に予備兵力は無い。 はやておよびヴォルケンリッターが現場に急行するには、あまりに時間がかかりすぎる。 となれば、現在、上空で戦闘行動中のなのは、フェイトの二名のみだ。 「スターズ1、ライトニング1、現状は!?」 《此方スターズ1。ごめん、はやてちゃん――敵の数がちょっと多すぎるの!》 《ライトニング1――それでも、後10分もあれば……ッ!》 「無茶でも何でも、五分で片付けるんや!」 そう叫ぶと同時に、通信――念話の対象を即座に切り替える。 「――――スターズ4、ティアナ! 聞こえるか!?」 《は、はい、八神隊長!》 「あと五分、五分だけ耐えて欲しいんや。すぐに救援が向かうからな!」 《了解――了解、しました!》 「ロングアーチは、敵勢力の調査! データ収集もや! リィン、情報を整理したら、片っ端からフォワードに送信!」 「了解したです、はやてちゃん!」 そして再度、念話を切り替える。 最悪の場合に備えて、隊長陣のリミッター解除の嘆願を開始するのだ。 自分に出来うる行動はあまりにも少ない。 だが、それでも行動しないよりは、遥かにマシだ。 マシの、筈だ。 グッと歯を食い縛りながら、八神はやては行動する。 ロングアーチも、スターズ分隊も、ライトニング分隊も。 誰もが必死で戦い続ける。それぞれの戦いを。 ―――――だからこそ、誰も気付かなかった。 落着物の内部で、何かが動き始めた事に。 そう、第三の――『想定外』が、起こり始めた事に。 ************************************ 薄暗く、静寂に満ちた室内に、微かな光が灯った。 続いて腹の底に響くような、機械の唸る音が響く。 それに伴い、光源が一つ、二つと次々に数を増していき、 ついには"それ"を照らし出す程にまでなっていった。 "それ"は棺桶のように思えた。 戦いに戦いを重ねて、ようやく兵士がたどり着く平穏。 しかし"彼女"は、その穏やかな時間を壊さねばならない。 一瞬の躊躇の後、"彼女"はその棺桶を起動した。 《…………よく眠れた?》 低い音を立てて、棺桶の蓋が持ち上がる。 "彼"にとっては聞き慣れた声。 さて主観ではつい先程まで聞いていたのだが、 客観ではどれほどの間、聞くことが無かったのだろうか。 姿の見えない女性の声に対し、低い落ち着いた声で返答をかえす。 「ああ。キミが管理していた割には。 ………………状況はどうなっている?」 《あんまり良いとは言えないわね。 ――――あなたが必要になったのよ》 詳細な説明を女性がするより先に、鈍い震動が船体を襲った。 更には微かにだが大気の焦げる懐かしい臭いが漂ってくる。 そして――空間を切り裂く、あの鋭い射撃音も。 「時間はあまり無いようだ」 それで悟ったのか、彼は声に対して頷きを返した。 《いつもと同じね。――戦ってるメンバーも。 たった四名で粘っているけれど、長くはもちそうに無いわ。 ……変ね、戦争が終わったのを知らないのかしら。 どちらに味方するの?》 「人類だ」 《でしょうね》 手近なコンテナの一つを解放し、内部から黒光りする兵器を引っ張りだす。 コンテナに刻印された文字はMA5C。 俗にアサルトライフルと呼称される、強力な携行火器である。 それを背中にマウントし、続いて左腰に手を伸ばした。 其処に吊るされているのは一丁の拳銃。 既に型遅れになって久しいが、彼にとっては唯一無二、最良のサイドアームだ。 そのスライドを引き、初弾を送り込む。 《…………大丈夫? 目が覚めたばかりで寝惚けていない?》 「問題は無い」 彼がそう言って船体から飛び出すのと、巨大な兵士―― ――『ハンター』が、右腕の燃料ロッド砲を発射したのは、ほぼ同時だった。 すぐ目の前では、両腕に銃を握った娘が何か叫んでいた。 視線の先には、回避のタイミングを逸したのだろう。 片腕にガントレットを装着した――やはり少女が、呆然と立ち尽くしている。 躊躇う事無く彼は駆け出した。 二挺拳銃の娘を飛び越え、地を駆け、瞬く間に少女の前へ。 すれ違うとき、彼女が眼を閉じながら何かを呟くのが見えた。 言葉はわからない。 だが――……こういう時、兵士がどう思うかは良く知っていた。 だから彼は言い切った。 「まだ終りではない」 ************************************* 「Not Yet」 もう駄目だ。 そう思い、呟いた瞬間。 奇妙な声が聞こえ、スバルが眼を開けると緑色の背中が広がっていた。 続いて、閃光と轟音。 間近で炸裂した、巨人兵士の砲撃だ。 自分が死を覚悟した攻撃。 だが――自分は生きている。 奇妙な泡のようなシールドの内部にいるからだ。 「…………へ?」 事態に脳が追いついていない。 何故、バリアジャケットをも貫通するような攻撃に、これは耐えているのか。 いや。 そもそも目の前の人物は何者なのか。 緑色の装甲を纏った――戦士。そうとしか認識できない存在。 そうやって観察している間にも、彼の動きは止まらない。 瞬きするよりも早くシールドから飛び出したかと思えば、 その左手に構えた拳銃が、一挙に火を吹いた。 数えている余裕はあまり無かったけれど、多分十二発だとスバルは思った。 だって十二体の小人兵士の頭が吹き飛んで、斃れちゃったんだから。 ティアとキャロの攻撃でやっつけたのが八体で、 全部で二十体だったから――すごいや、もう小人はいない。 「スバル! 馬鹿! 早く――早く引っ込みなさい!」 ティアの泣きそうな声が聞こえた。ああもう、ティアは素直じゃないなあ。 弾幕も消失し、一挙に極度の緊張から解放されたせいか、 スバルは、ふらつく足取りで遮蔽物へと後退する。 「馬鹿! な、なんであんな所でボーっと突っ立てるのよ、馬鹿!」 「あ……えっと、……うん。……ゴメン」 へなへなと膝から崩れ落ちるようにして腰を下ろした。 本当に、生きているのが不思議なぐらいだった。 そして――――ティアナに謝りながら、視線を戦士のほうに向ける。 そう、戦いはまだ終わっていないのだ。 ************************************** 先に言っておこう。 ティアナの「大火力の敵を率先して撃破する」という作戦は、 彼女が今までの模擬戦闘で経験したことから導き出したものであり、 間違いなどではなかった。 戦闘というのは、互いに全滅するまで行うものではない。 士気が挫ければ撤退することもあるだろうし、 ある程度の損害を受けても、撤退するのが得策だろう。 勿論、状況や作戦などが撤退を許すならば、ではあるが。 だからティアナが巨人兵士――ハンターの撃破を最優先としたのは、 重ねて言うが、決して間違いではないのだ。 巨大な兵士であり、大火力を有するハンターが倒れれば、 その他の雑兵の士気を挫くか、 戦力の減退から、指揮官が撤退を決断する可能性は、あった。 だが、この場合、最大火力を有する敵を狙うのは、 その敵を一撃で倒せるという事が前提となる。 仮に倒せないとなれば、雑魚敵からの一斉射撃が延々と続き、 まともに攻撃することなど、ほぼ不可能だ。 つまりこの場合は、雑魚を先に潰して弾幕を削った後、 火力を集中して強敵を撃破するという手法が適切であった、といえる。 ティアナ、そしてフォワード陣は、 ガジェットという大多数の兵力に対しての模擬戦闘は何度も経験したし、 高町なのはという、大火力の存在に対しての模擬戦闘の経験もある。 しかしながら、両者が混在するという事に対しては経験が無かった。 其処が、今回のような事態を招いた原因といえるだろう。 それはティアナの責任ではない。 ともかくだ。 "彼"は、敵対存在が好戦的であり、降伏も撤退も有り得ないと知っていた。 小人兵士=グラントどもの一斉射撃、弾幕が如何に恐ろしいかも知っていたし、 ハンターの倒し方も実に熟知していた。 突貫である。 まさか"彼"のような存在が乱入してくるとは思わなかったのだろう。 燃料ロッド砲を発射した直後の、再装填作業の最中、 それを中断して"彼"を白兵で迎え撃つべきかどうか、一瞬の判断の遅れ。 実に致命的だった。 ハンドガンを腰にマウントし、背中のライフルと交換。 そして500kgの重量と速度を乗せて、"彼"はハンターを銃把で殴りつけた。 鈍い衝撃。ハンターの巨体が揺らぐ。これで十分だ。 ハンターの装甲が無い部位は、頭部か腹部。 普段はシールド(この場合は文字通りの物理的な盾である)に守られているが、 こうして懐に飛び込んでしまえば、最早打つ手はあるまい。 銃口を押し込み、フルオートで32発の銃弾を叩き込んだ。 ――甲高い悲鳴。 内部に詰まっていた環状生物の群が、ぐずぐずと崩れ落ちる。 勿論、本来ならば狙撃銃で頭部を撃ち抜くか、 ロケットランチャーやレーザーを叩き込むか、 或いはグレネードを投げ込むかするのが手っ取り早いのだが、 そういった装備は今、この場には存在しない。 彼のハンドガンは狙撃も可能だが、如何せんハンター相手では火力不足だ。 《あとは――降下艇ね。 グレネードを持って来れば良かったかしら?》 「問題ない」 方法はある。少々梃子摺るだろうが。 まさか兵員が全滅するとは思っていなかったのだろう。 ぐるりと銃口を此方に向ける降下艇に対して、 彼は油断なく、アサルトライフルのマガジンを交換した。 そして降下艇に対して肉薄攻撃を仕掛けるよりも早く―――― ――――上空からの斬撃が砲塔を切り飛ばし、 圧倒的な熱量をもった砲撃が、降下艇を消滅させた。 *************************************** 「お待たせ、皆ッ!」 「みんな――大丈夫ッ!?」 スターズ1、ライトニング1の到着。辛うじて間に合った、という所か。 すでに腰が抜けていたスバル以外――ティアナ、エリオもまた、その場にへたり込んだ。 「ふぇ、フェイトさん、フェイトさぁん……ッ」 キャロに至っては泣き出してしまう始末。 ――エリオは辛うじて堪えているけれど、やはり同じ。 無理もない。まだ二人とも小さいのだ。 地面に降り立ったフェイトは、二人に歩み寄ると、ぎゅっと抱きしめる。 「大丈夫。もう大丈夫だから――ごめんね、遅くなって」 「ふ、ふぇえぇぇえぇえぇ……ッ」 ついに堪えきれなくなったキャロが泣きじゃくり、フェイトが慰める ――その光景を眺めていた"彼"は状況は終わったと言わんばかりに、 背中にアサルトライフルをマウントし、ハンドガンを腰部に吊るす。 そしてちらりと全員の様子を見回して――なのはに視線を向けた。 恐らく、指揮官――少なくとも地位が高い存在だと気付いたのだろう。 (うーん……わかっちゃうのかな、やっぱり) 少しばかり苦笑を浮かべながら頷いてみせ、 彼の思考が正解である事を認める。 「あの……助けてくれて、ありがとうございました。 良かったら、貴方のお名前、聞かせてもらえないかな?」 その言葉に"彼"は少し待て、というように掌を突き出した。 *************************************** 「どうだ、コルタナ?」 《ちょっと待って――随分と言語が複雑なの。 ――大体、あんな光学兵器を操れる人間がいる事だけでも驚きなのに、 空まで飛べるなんて、馬鹿げてるとしか言いようが――……》 「…………」 《文句があるなら、貴方が未知の言語を翻訳してる所を見てみたいわ。 ――まったく、何よこれ。 ジャーマンとイングリッシュ、ジャパニーズが混ざってるなんて……。 ええと――お待たせ。これで良い筈》 *************************************** 「……言葉はこれで通じるか?」 しばらくして聞こえてきた声は、低く落ち着いた男性のものだった。 表情は金色に煌くバイザーのせいで読み取ることはできないが、 何となく第一印象通りの声だ、となのはは感じ取る。 「うん。大丈夫――ちゃんと通じているの」 「ならば其方の所属、階級、姓名を聞かせて貰いたい」 恐らくは、と"彼"は思考する。 ある程度以上に統率の取れた動きや、多少のアレンジの差はあるとはいえ、 ほぼ同一のモチーフで作られている制服。 そういった要素を鑑みて判断する限り、彼女達は何らかの組織に属している筈だ。 「所属は時空管理局本局、古代遺物管理部機動六課。 スターズ分隊長、高町なのは一等空尉です。 貴方の所属とお名前も教えてもらえるかな?」 ――時空管理局。古代遺物管理部。 そしてタカマチ・ナノハという名前。 《時空とはまた大きく出たわね。名前は――ジャパニーズかしら?》 脳内に響く女性の声――閉鎖通信に頷きながら、"彼"もまた自分の名前を口にする。 最も、恐らくは、これもまた――彼女にとっては理解できない単語の羅列ではあるだろうが。 「所属は国連宇宙軍海兵隊。SPARTAN-II-117」 そして、 「階級は――――マスターチーフだ」 ******************************************* 「状況完了、ってところやね。 何とかかんとか、死傷者が出ずに済んでよかったわ」 モニターに映る"彼"――マスターチーフの言葉を聴きながら、はやては大きく息を吐いた。 突如出現した未知の軍勢。謎の兵士。レリック。ガジェット。 あのエイリアンが、ガジェットと共闘しているのか、或いは偶然同時にあらわれただけなのか。 「あんまり良い状況じゃあ無いですけどね。 例の落着物――を狙ってだと思うんですけど、 未知の勢力が出たとなると……やっぱり管理外世界からでしょうか?」 シャリオがキーボードを叩くと同時、モニターに映し出されたのは、 先程まで行われていた戦闘の状況写真。 奇怪な装備――それも統一された――手に取り、統率を持ち、集団で行動している。 となると――……。 「軍隊、やろか?」 「わかりません。ただ――……通信を傍受したんですけど。 まだ解読や翻訳はできないですし、ノイズも酷かったんですが、 ちょっと気になる情報がありまして」 続いてモニターに映し出されたのは、一つの単語。 「解析できたのは、この言葉だけでしたけれど。 通信を傍受した結果、何度も何度も繰り返されているんです」 はやては、記憶していた。 聖王教会のカリムから齎された情報。 恐るべき予言。或いは管理局の終焉を告げる文書。 それを齎す、悪鬼の如き存在の名―― 幸いなるかな 忌むべき者ども 災いなるかな 死せる王よ 鉄の鎧 鉄の槍 鉄の意志 持つ 一人の 兵 によりて 数多の 海を 守る 法の船 中つ大地の 法の輪 打ち砕かれん 称えよ栄光 仰げよ武勲 伝えよ千年の後までも その名―――…… 「リクレイマー……ッ」 HALO -THE REQULIMER- LV1 [First contact] Fin [[戻る その他363]] [[目次へ REQULIMER氏]] [[次へ REQULIMER2話]]
https://w.atwiki.jp/nwxss/pages/225.html
作品情報 クロス元 らき☆すた 作者 10-551◆xdkSnUtymI エピソード一覧 /第01話? /第02話? /第03話? /第04話? /第05話? 解説 もとはらき☆すたのSSスレ(まとめサイト)に投稿されたものを再構築したものとのこと。 ハンドアウト PC1:柊かがみ 登場時点では未覚醒ですが、彼女もウィザードです。クラスは陰陽師/ヒーラー覚醒時のレベルは5になります。 PC2:泉こなた クラスは現時点では秘密。レベルは9です。 PC3:黒井ななこ クラスは魔術師/キャスター。レベルは7です。 PC4:柊蓮司 クラスは魔剣使い/アタッカー。レベルは13、「シェローティアの空砦」のデータを元にしました。
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/3596.html
「 そこで止まれ!! 」 霧の夜に力強く響く男性の声、その一言に己が魂の全てを注ぎ込むかの如く...... 声の主が構える大型リボルバー、その銃口の先に佇むのは黒いフェルト帽を目深に被り、同じく黒く大きな二重外套を ゆったりと優雅に着込んだ、まるで大鴉(Raven)の如き大きく不気味な人影。 「これは警部殿、こうして直にお会いするのは初めて、ですかな?」 落ち着いた深みのある声で喋りながら、それまで背を向けていた“大鴉”は、ゆっくりと警部の方へと振り向く。 そこはスラム(貧民街)の、ほぼ中心に聳える様にして建つ赤煉瓦でできた古い精肉工場。 その二つの人影は屋上の一角に、まるで霧に覆われた街並みを見下ろす様にして佇んでいた。 「あぁ確かに……やっと会えたな、この化け物!」 追いつめられて尚も、その場の状況を楽しむかの如く不敵な笑みを浮かべる黒尽くめの大男。 そんな相手を前に若い警部は、その幾分か仕立ての良い年季の入った紳士服を着崩し、それまで全力で走って来たのか 肩で大きく息をしながら、明るいブルーの瞳で目前に立つ大鴉を睨んでいた。 「して第一印象は、いかが?」 「……キザだ」 「それはどうも」 「褒めてんじゃ無い!」 「ご謙遜を」 「黙れ人殺しが!」 自身に銃口を向けられているにも関わらず、未だ気取った様子で挑発の言葉を口にする相手に対し警部は、それまで抑 えてきた気の昂りを吐き出す様にして怒鳴った。 彼の汗ばんだ手に握られた6連発、その照準は震えながらも確実に相手の左胸へと向けられていた。 「だが貴様の、その自信たっぷりな余裕も……」 言葉の一つ一つを警部は、しっかりと噛みしめる様にして決め台詞を言い放ち、未だ震えのくる指先で重い撃鉄を起こ すと、辺りが静まり返る中で金属部品が擦れ合う“ガチャリ!”っという音が不気味に響いた。 「 これで、終わりだ!! 」 だが、それでも黒尽くめの男は怯む事無く、それどころか「さぁどうぞ」と言わんばかりに両手を大きく広げ、さも楽 しげな笑みを浮かべると、狂喜の笑い声と共に己が“宴”のクライマックスを宣言した。 「まだです、まだですぞ警部殿! さて次は、如何なさいますかな?」 *リリカルxクロス~N2R捜査ファイル 【 A Study In Terror ・・・第六章 】 そして今...... 日付が変わった5月12日の深夜25時を約5分は回った頃 ミッド貿易センター第三ビル前の大通り 「 させるかよォ!!! 」 かつて同じ”大鴉”と向き合った「警部」と同様、その一言に魂の全てを注ぎ込むかの如く赤毛の少女は、己が右拳を 真っ直ぐに突き出しながら叫んだ。 その大きく怒らせた両肩を、そして大地を踏みしめるかの様にしっかりと踏ん張った両足を小刻みに震わせ。 今や起き上がれぬ程に傷付き倒れた姉に向かって、その残忍な刃を振り下ろそうとしていた「怪物」を睨みながら。 その視線の先では、狂気を滲ませたグレイの瞳で相手の姿を、射抜くかの如く真っ直ぐに凝視する黒服の紳士が姿。 少女の叫びがビルの谷間に木霊し、冷え切った夜の空気を揺さ振った瞬間、全ての時が止まった。 惨劇を生き延びた者たち全員が、その場に凍て付いたかのごとく立ち尽くし、身動ぎすらままならぬ状態で刻一刻と変 化していく状況を、固唾を飲んで見守っていた。 そうして皆が、そう惨劇の張本人たる黒服の紳士さえもが動きを止める中、最初に動いたのは...... 「アタシ等の、アタシ等の家族に……アタシの姉貴に」 金属パーツが弾け擦れ合う甲高い響きとともに、魔力カートリッジの空薬莢がデバイスから排出され、それと同時に充 填された魔力が少女の身体から金色のオーラとなって炎の如く立ち上った。 「 手を出すんじゃネェっ!!! 」 デバイスの稼働音と共に彼女の怒声が雷鳴の如く響き、静まり返っていた場の空気を激しく揺さぶった。 だが、その叫びに答えたのは...... 「はぁ~、まったく」 ......一つの溜息 「いけませんな、お嬢ちゃん。 これでは何もかも台無しですぞ」 幾分か腹立たしげな口調で呟くと黒服の紳士は、空になった右手を軽く振りながら自身を睨む少女の姿を、その剃刀の 如く鋭い眼差しで一瞥する。 「私のGameに参加したいなら、ちゃんと順番を守るのが礼儀と……」 悪戯な子供を叱り、戒め、そして諭す様な口調で彼が話を続ける。 っが、そんな相手の言葉を遮り、打ち消す様にして再び少女の怒りに満ちた叫びが轟いた。 「 だ ま れ !! 」 そして続けざまに響くデバイスの射撃音。 彼女の右腕に装着されたガンナックル、そこから放たれた大出力の魔力弾は主の怒りを象徴するかの様に、まるで闇を 切り裂く光の矢が如く黄金の輝きで辺りを煌々と照らしだす。 だが、それは...... 「……なっ!?」 少女は思わず絶句する。 それは双方の対決を息を飲んで見守っていた陸士たち、そして魔導師達も同じだった。 そうそれは、ほんの一瞬の出来事 彼女が放った強力な魔力弾を黒服の紳士は、身動ぎはおろか眉ひとつ動かす事無く、まるで目障りなハエを払うかの様 な仕草により右掌だけで軽く弾き飛ばしたのだ。 そうして目標を反れ流れ弾となった魔力弾は弧を描く様にして彼の背後、道路の向かいに建つビジネスビルへと命中し 凄まじい大音響と共にビルの壁面から真っ赤な炎を吹き上げた。 これは、悪夢? これは夢? それとも性質の悪いジョークなのか? たった今目前で起きた出来事を目の当たりにし、その場に居た皆が凍て付き、竦み上がり、中には恐怖のあまり気を失 って倒れる女性魔導師まで居た程...... そんな周囲の事など気に掛ける事無く黒服の紳士は、静かに背後を振り返って肩越しに、瓦礫の雨が下の歩道へと降り 注ぐ様子を眺めると、顎に手をあてて何かを考えるかの様な仕草をする。 そうして前を向き、再び視線を唖然とする少女へと向けると、未だ身動き出来ぬまま倒れている彼女の姉の傍らを離れ それまで立っていた浅いクレーターの中から外に向かって素早く跳躍する。 そうして道路の上へ堅い靴音を立てて降り立つと、彼は徐に右腕を突き出したかと思うや少女を真直ぐに指差した。 そんな相手の行動に彼女が思わず身構えると、その様子を見た黒服の紳士は白い歯を見せて薄ら笑いを浮かべ、そのま ま少女に向かって軽く手招きをする。 “誘ってる!?” その動作を見た彼女が呆気に取られている前で彼は、ヨレヨレになった外套を大きく翻したかと思うや、まさに風の様 な速さで飛ぶが如く走り出す。 驚いた皆が身構える前で黒服の紳士は、そのまま黒焦げのスクラップと化し、黒煙を上げて燻ぶる装甲車の残骸の上を 一気に飛び越えて行った。 向かってくるでも無く、皆に背を向けて去って行く黒服の紳士。 それは、まるで「戦いたければ、追って来い」とでも言って、相手を挑発しているかの様に見えた。 「……逃げんなよ」 そう呟きながら少女は、気が付けば前へと踏み出していた。 「人にケンカ売っといて、サッサと……」 その背後で傷付いた身体を無理に起こし痛みを堪えながら、熱くなった妹を必死に引き留め様と弱々しく腕を伸ばす姉 の声も、口々に「止せ、行くな!」と叫ぶ陸士や魔導師達の声すら彼女の耳には聞こえなかった。 そう、そのとき少女の耳に響いていたのは、摩天楼の谷間に木霊する狂喜の笑い声...... 「 逃げんじゃネェ!!! 」 そして黒服の紳士の後を追い、空中に展開したエアライナーの上を疾走しながら、破壊されて転がった装甲車の上を飛 び越えた彼女の目に映ったのは...... 道路を塞いでいたパトカー数台の上を軽々と飛び越えながら、待機していた陸士達による一斉射撃すら物ともせずに掻 い潜り、真夜中のメインストリートを颯爽と走り抜ける“怪物”の黒い後ろ姿だった。 **************************************** 「姉上ぇぇ! ノーヴェ--! どうか返事をぉ!! 無事でしたら二人とも……どうか」 大声で姉妹二人の名を呼びながら、隻眼の少女が一人...... 正に悪魔の屠殺場が如き有様となった玄関前広場を、その小柄で華奢な容姿とは不釣り合いな灰色のロングコートを羽 織った姿で、輝く様な長い銀髪を揺らす様にして歩いていた。 辺りを見渡せば、そこかしこに先の騒動で瞬時に命を奪われた陸士達の屍が転がり、また生きてはいても重傷を負わさ れたり、あるいは無残にも四肢を失って呻く者達の呻き声が絶えず響いていた。 足元へと目を向ければ、広場の石畳は惨殺された者達が流した血溜りで真っ赤に染まり、あちらこちらに千切れ跳んだ 手足や肉片が散ばっているのが見える。 「救護班は! 救護班は何処だぁぁ!?」 「……あ、し……脚が、オレのあ、脚が……誰、か」 「嫌だぁ! 死にたくない、死にたく……」 必死で助けを呼び求める怒鳴り声や苦悶の叫び、腹を切り裂かれ飛び出した自身の臓物を押さえる若い陸士が、その想 像を絶する苦痛に上げる悲鳴...... どんなに耳を塞ごうとも聞こえてくる様々な叫びと、辺りを覆い尽くす血臭に吐き気を催し、気を失って倒れそうにな る自分を気力だけで支えながら、それでも彼女は姉妹の姿を必死に探し求めた。 「どうか二人、とも……ぐっ」 目を覆わんばかりの惨状を前にして、既に失った筈の少女の右眼......その黒い眼帯の奥で、焼け付くように痛み続け ていた右眼が更に激しく疼き始め、その苦痛に彼女は思わず歩みを止めた。 その鼻を突く様な臭い、溢れ出した血や飛び散った汚物が混ざり合った悪臭...... そして深紅なる朱、その視界を覆い尽くすほどに広場の石畳を染め上げる鮮血の色...... それら全てが目には見えぬ巨大な壁となって少女の、その小さく華奢な身体の上へと重く圧し掛かる。 吐き気を催す異臭とともに、ジットリと湿り気を帯びた濃密な空気が身に纏わり始める中で忘れていた、いや出来る事 なら忘れたかった忌まわしい記憶が、悪夢となって彼女の脳裏を過った。 “これは、これはあの時と、あの時と同じ……” いま少女の目前に広がる地獄の様な光景。 遠い過去に一度それに近い、いや殆ど同じ光景を彼女は目の当たりにしていた。 あの時の地下施設で、数え切れぬ程のガジェットが群れによって、無残に殺されていったゼスト隊のメンバーたち。 その中には...... 右眼の奥からジクジクと響く痛みと共に、その小さな胸の奥で遠い過去の亡霊たちが目覚め、それらが苦悶の呻きと共 に彼女の名を...... 「おい君ぃ! しっかりしろ、どうした!?」 突如その小さな肩を激しく揺すられ、必死で呼び掛ける声に少女はハッ! と我に帰る。 顔を上げれば彼女の目前には呼び掛けた声の主、辛うじて惨劇を生き延びた陸士の一人が滝の様な汗で顔をグッショリ にしながら、不安げな表情で自身の眼を覗きこんでいた。 「キミ所属は? どっか怪我でも?」 「いえ、だ、大丈夫です。 ただ少し気分が……」 「……無理もない。 こんな状況じゃあな」 なんとか気を取り直した少女の言葉を聞き安心した彼は、未だ凄惨な傷跡の残る広場を見回しながら溜息を吐いた。 【チンク姉、聞こえる? 今どこに?】 そんな中で不意に隻眼の少女ことチンクの元に、リンクを通じて連絡が入った。 すぐに返事をしようとするも彼女は、冷たい手で自身の心臓をガッシリと掴まれたかの感覚に囚われて為か、すぐには 返答する事ができず、少し間を置いて呼吸を整えながら何とか言葉を紡ぎ出した。 【でぃ、ディエチか、すまん】 【気分が悪いの? まさか怪我でも……】 【いや、姉は大丈夫だ。それよりどうした?】 【じゃあ落ち着いて聞いてねチンク姉。 いまギンガさんを見付けたんだけど】 【姉上を!?】 心配そうな様子で気遣う妹ディエチに、少し無理をしながらチンクは自身の無事を伝える。 だがその後に妹から伝えられた言葉を聞いた彼女は、その場から自ずと駆けだしていた。 【うん。 でもギンガさん、酷い大怪我を……】 **************************************** 「……」 言葉は出なかった。 いや言葉より以前に声を出すこと自体が出来なかった、とでもいうべきだろうか。 妹より連絡を聞いてから十数分後...... 今は全身血塗れとなった姿で横たえられ、救急車の到着を待ちながら救命士の応急処置を受ける姉ギンガの傍らにガッ クリと膝を突くとチンクは、その傷付いた手を取ってポロポロと大粒の涙を流した。 「大丈夫だ、病院で手当を受ければ何とか……」 彼女を落ち着かせようと声を掛けるカルタス陸尉の言葉すら、その耳に届かないのか今のチンクは傷付いた姉の手を握 ぎり締めたまま、押し殺した声で咽び泣くばかりだった。 悔しかった。 彼女が深手を負わされた姉ギンガの姿を目の当たりにするのは、これで二度目だったからだ。 その前は利用されていたとはいえ自身の手で、その更に前には間接的であったとはいえ彼女の母親を...... だからこそチンクは、その小さな胸の内で堅く決意していた。 もしまた姉が、そして家族の皆が命の危険にさらされる時が訪れたならば、その時こそは自分が盾となろうと。 それで全てが許されようとは思わない。だがそれでも自身が身代わりとなる事で、少しでも自分が背負ってしまった過 去を償おうと、なにより妹たちにまで重荷を背負わせまいと。 だが今は...... ようやく到着した救急車へ収容する為に、救命士達が重傷を負ったギンガを移動式のストレッチャーへ乗せようとする 時ですら、チンクは姉の手を決して放そうとはしなかった。 悔しかったから それ以上に許せなかったから 姉妹が危機に瀕した時、その傍に居なかった自分の事を 救命士やカルタスが掛ける言葉に対し、泣きながら首を横に振る彼女の姿を見てディエチが、そして周囲の皆が沈痛な 面持ちで見守る中...... 「チ……ンク、おね、が、い……」 そのか細い声を聞いた彼女が泣くのを止め、ゆっくりと握っていた手を緩めながら顔を上げると、そこには薄らと目を 開けて自身を見つめるギンガの顔が見えた。 「 二人を…私、は大、丈夫だ、から、二人を……」 未だ朦朧とする意識の中、それでも彼女は泣き腫らした眼で自身を見つめる妹に、今出せる精一杯の声で何かを伝えよ うとしていた。 「……」 何も言えなかった。 必死で何かを伝えようとする姉に、何か言葉を掛けたかった。 なのにチンクは言葉はおろか、小さく呻く様な声しか出せぬまま、救命士達によって運ばれていく姉ギンガを見送る事 しか出来なかった。 「……ノーヴェと、それとウェンディの事だよ。 彼女が伝えたかったのは」 その声にチンクが泣き腫らした顔を上げると、自身の傍らに立って共にギンガを乗せた救急車を見送っていたカルタス が静かに口を開いた。 「彼女が倒れた時、それを庇ってノーヴェが犯人に立ち向かったんだが……」 そこまで話すとカルタスは溜息を吐き、少し俯きながら幾分か疲れた様子で、右手で自身の額を軽く押さえた。 「立ち向かって、どうしたんです?」 泣き続けたせいか、すっかり掠れてしまった声で話すチンクに向かって彼は、これまでの経緯を少し震えるの来る声で 静かに語り始めた。 魔導師達によって追詰められたはずの殺人犯が、凄まじい凶暴さを露わに破壊と殺戮の限りを尽くしたこと。 そんな恐ろしい相手に憶する事無く、たった一人で正面から立ち向かったギンガのこと。 そして彼女が深手を負わされ倒れた時、その場に駆け付け殺人鬼を食い止めたノーヴェのこと。 「その後で彼女が、犯人の挑発に乗って……」 「じゃあ、あいつも、ウェンディも一緒に?」 **************************************** 【ノーヴェ! ノーヴェ! 聞こえてたら返事をしてくれっス!】 自身の固有武装“ライディングボード”を駆ってウェンディは、摩天楼の谷間を擦り抜ける様にして低空を飛びながら リンクを通じ姉ノーヴェを呼び続けていた。 それは何時間か前の事...... あの時、犯人の挑発に乗せられたノーヴェが、皆の制止を振り払うようにして飛び出して行ったすぐ後で、カルタスや 他の陸士達と共に先の闘い深手を負わされたギンガの元へと駆け寄った時である。 「あいつを、ノーヴェを探して来るッス。 あたしが連れ戻して来るッス!」 そう言って皆の前から飛び出したウェンディだったが、実際のところ姉を連れ戻すという理由は彼女にとって、あの場 を離れる為の口実でしか無かったのかも知れない。 とにかくあの場には居られなかったのだ。 悔しくて、心の底から悔しくて...... 止められたとはいえ姉が、たった一人で残忍な“怪物”を相手に戦っている時、それをただ見ている事しか出来なかっ た自分が心底悔しかった。 例えギンガに後で怒鳴られる事になったとしても、あの時に自身も加勢するべきだったはず。 だが援護に向かおうとする度、あの殺人狂が己の存在を鼓舞するかのごとく振った凶行が脳裏を掠め...... 何も出来なかった。 そんな自分が許せなかった。 そして大殺戮から約1時間半後の深夜26時32分 ウェンディ・ナカジマ二等陸士は今、“ライディングボード”を駆って、先に殺人鬼を追って飛び出して行った姉ノー ヴェの姿を探し求めていた。 この後まさか彼女自身にとって、最悪のトラブルが待っていようとは知る由もなかった。 【ノーヴェ! 何でも良いから答えてくれっス!】 ウェンディは呼び続けた。 この眼下に広がるオフィス街の何処かで、現場から立ち去った殺人狂を追い掛けているであろう姉の名を。 ......っと 【 逃げられたぁ!! 】 そんな彼女の呼び掛けに応えるかのごとく、リンクを通じノーヴェの怒鳴り声が聞こえた。 【え、え? の、ノーヴェ!?】 【 バケモノ野郎を見失った! クソォっ!! 】 【見失った、って今どこに……】 突然の事に驚いたウェンディは危うくバランスを崩し、その眼下に見えるビルの谷間へと落ちそうになりながらも、辛 うじて体制を立て直しボードを停止させた。 【どっかのオフィスん中。 けど分かんねぇーよ今どこだか!】 【オフィスの中って、なんでそんなトコに?】 【アイツ(犯人)追っかけてて飛び込んじまった。 つか誰だよ、こんな所にビルなんか建てたのは!?】 冷や汗をかきつつ返事をするウェンディに、相手を取り逃がしてしまった事をノーヴェが悔しげに話している時、そこ に同じリンクを通じて別の声が加わった。 【ノーヴェ! それにウェンディ、二人とも無事か?】 【【チンク姉ぇ?】】 自身の呼び掛けに対し先に飛び出して行った妹たちが、ほぼ二人同時に返事をするのを聞いて安心したのか、リンクの 向こうからチンクが安堵のため息を吐くのが聞こえた。 【こっちは大丈夫っス。 でもチンク姉いまどこに?】 【お前たちを探してたところだ。 全く何を考えてるんだ二人とも!】 【……ごめん、申し訳ないっス】 姉からの厳しい言葉を聞きウェンディは、言葉に出来ぬ思いを抱えたままボードの上で意気消沈し、それはノーヴェも 同じだったようでリンクの向こうより彼女の詫びの言葉が聞こえた。 【ごめんよチンク姉。 でも……】 【言いたい事は分からんでもない。 姉上や他の皆が受けた仕打ちを見れば、私とて我慢など出来ぬ】 ディエチが運転する大型バイクの後ろに乗り、そこからリンク先で自身の言葉に聞き入る妹達に対し、自らの感情を抑 える様にしてしてチンクは、切々とした口調で二人に語りかけていた。 【だが相手の正体や目的が不明なままで、無闇に深追いするのはどうかと思う。 それに今は姉上の事も心配だしな】 【【……】】 【とにかく一度合流しよう。 いま姉はディエチと一緒に中央通りを西に向かっている】 姉からの指示を聞きながらウェンディは、すぐさまライディングボードを中央通りの有る方へと向ける。 【細かい話は皆で集まってからだ。 いいな?】 【了解ッス!】 そうしてチンクの言葉に返事をすると彼女は、ビルの谷間を縫う様にして飛んで行く。 しかし...... ウェンディが中央通りの位置を確認する為に、ライディングボードの高度を上げた瞬間である! その眼下に聳えるビルの一つ、その屋上を見下ろした彼女は驚きと恐怖のあまり紅い瞳を大きく見開き、身体の血が全 て瞬時に凍て付くかのような戦慄を覚えた。 “アイツだ!!” そう彼女の目に映ったのは数時間前に、あのミッド貿易センター第三ビルの屋上へと追詰めた時と同じく、手摺に凭れ かかる様な姿勢で、こちらに背を向けて立つ...... **************************************** 【 居たァーー!! 】 突然リンクの向こうから響く悲鳴にも似た叫びに驚き、危うくバランスを崩しそうになったノーヴェは、何とか姿勢を 立て直しながら黄金色のテンプレート“エアライナー”の上を疾走していく。 【どうしたウェンディ! 何が……】 【 見付けたッス! 】 【落ち着けウェンディ! 見付けた、って何を!?】 パニックに陥った状態で喚く妹を宥めつつ、状況を何とか確認しようとするノーヴェ。 だがそこで彼女は、ショックのあまり未だ混乱するウェンディの口から、思わぬ言葉を聞かされる事となった。 【 あ、あいつッス、あのバケモノ野郎ッス!! 】 【アイツが? 何処に、今どこに居るんだ!?】 【 いま、今アタシが居る1ブロック先の、び、ビルの屋上に!! 】 「違ァうって! お前は今どこに居るんだ、って聞いてんだよ!」 なかなかパニックが治まらない妹に向かってノーヴェが、かなり強い口調で喝を入れる様にして呼び掛けるや、少し間 を置きウェンディからの返事が聞こえた。 【今は、今は三番街の、たぶん三番街の、交差点の上あたりッス。 それ以上は分からないッス!】 「分かった、分かったからそこで待ってろよ! 良いな!?」 【……り、了解ッス】 恐怖と興奮が無い混ざりになった声で、なんとか言葉を返す妹からの応答を聞くとノーヴェは、すぐさまデバイスで連 絡のあったポイントを探し始める。 「三番街の、三番街の・・・どこだ?」 《 Sir! (ウェンディからの)連絡が有った場所は、三番街の中心に有る立体交差点の付近かと…… 》 「じゃあアイツも、あの黒服オヤジも近くに居るって事だな!」 デバイスが示すポイントを確認するや否や、すぐさまウェンディが居ると思しき方角に向け移動を始めるノーヴェ。 だがその横からリンクを通じ、少し慌てた様子で二人に向けチンクからの通信が入る。 【 待て二人とも! 無闇に動くんじゃない! 】 【で、でもチンク姉……】 【 ダメだ! とにかく姉たちもすぐ三番街へ向かう。 それまで迂闊な行動はするな、良いな二人とも! 】 【……わ、分かったよ】 いちだんと厳しい口調で逸る妹たち二人を制するチンクの言葉に、どこか煮え切らぬ様子でノーヴェは返事をした。 ......っが 【 返事はどうしたウェンディ! おいウェンディ!! 】 もう一人の妹からの応答が無い事に焦り、その名を何度も呼ぶチンク。 その様子にノーヴェが戸惑い、そして言い知れぬ不安の抱き始めた時である。 突如として響く重い射撃音。 それに驚き辺りを見回すノーヴェの目に、まるで花火の様に鮮やかな光を放ちながら高エネルギー弾の閃光が、そう遠 くは無い所で幾つも飛び交う様子が見えた。 「……まさか!?」 《 間違いありません Sir! 先ほど連絡の有った立体交差点付近のビル屋上です! 》 「 あのバカっ! なに勝手な事してんだ全く……ジェットエッジ!! 」 《 Alright Sir! 》 主の呼び掛けに応えるや、それまで待機状態だったデバイスが唸りを上げて起動する。 黄金の輝きを放つテンプレートの上を、三番街の方角に向けて疾走していくノーヴェ。 彼女の燃える様に真っ赤な髪を激しい風が揺らす中、今その胸中に有ったもの...... ”頼む! 頼むから、早まった事すんじゃねぇぞ!” ノーヴェは走る、夜の闇を切り裂く様にしてビルの谷間を走り抜ける。 今この時にも妹はたった一人で戦いの場に立っているのだから。 血の匂いを求め身も凍る様な冷酷さを剥き出しに する、凶暴で残忍極まる“怪物”を相手に...... 「あんな、あんなバケモノ野郎を相手に、一人じゃムリだろバカっ!」 いま自身が向かっている先で、必死になって恐るべき相手と闘っているであろうウェンディ。 そんな妹の様子が脳裏に浮かぶや、ノーヴェの抑えようのない不安と焦りが、言葉となって口から零れ出し、その彼女 の心情に呼応しているのか、エアライナーの上を疾走するデバイスが見る見る内に加速していく。 《 Sir! Sir! 間もなく三番街です。 注意して下さい! 》 「わ、分かってるよそれ位!」 目指すポイントが近付いた事を告げるデバイス“ジェットエッジ”からの音声に、危うく我を忘れそうになっていたの かノーヴェは、幾分か緊張した様子で言葉を返す。 っが気が付けばそれまで響いていた、妹のデバイスの物と思しき射撃音が何時の間にか止んでいたのだ。 そして夜の静寂が再び辺りを支配しつつある中で、先を急ぐノーヴェの心中に最悪の状況が過った正にその時である。 彼女の目の前が急に開けたかと思うと、その眼下に幾つもの道路が混じり合う大きな立体交差点が見えた。 《 連絡のあったポイントに到着しました。 Sir! 》 その言葉を聞くやノーヴェは、すぐさまデバイスを中空で停止させると、妹の姿を求め周囲へと視線を走らせる。 「どこだウェンディ、どこに居るんだよいったい……」 ビルの屋上は勿論その下の交差点や道路にまで、くまなく目を向けて妹の姿を探し続けながらノーヴェは、次に立体交 差点の上で大きく旋回するようにしてデバイスを徐行させる。 そうして辺りを見回す彼女の目が建ち並ぶビルの一つ、通りに面して建つ約30階建てのビルの屋上へと向けられた時 そこに思わぬ光景が見えた。 それは...... まるでオーケストラを前に指揮者が振う指揮棒の如く、右手に握り締めた両刃の剣先を不気味に揺らしながら、ゆっく りとした足取りで“獲物”の周囲を円を描く様にして歩く黒服の紳士が姿。 そして、その円の中心で右脚の太股の辺りをザックリと深く斬りつけられ、その場に腰を落とし身動きのとれぬ状態と なって、震える手で自身の固有武装を構える...... 「 そんな…… ウ ェ ン デ ィ !!! 」 ・・・・・・Until Next Time